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第110話

シンはアキラがミサキの脚の付け根や太ももにつけた跡を、舌で楽しんだ後、ミサキの擬似ペニスを咥えた。 生殖のためには意味のないそこはアルファが楽しむための場所だからだ。 上目遣いに見上げてくるシンの目にミサキは震えた。 アキラの目を思い出したからだ。 金色の目。 それに対してシンの目は甘く溶ける飴のような茶色だった。 アキラにペニスを喰われる感触を思い出した。 アキラはミサキのそこを喰らう。 うまくてたまらないかのように。 実際そうなのだろう、アルファには。 オメガは美味い肉なのだ。 でも喰らっているのはアキラなのに、そこからミサキを見上げるアキラの目にはいつも痛切な光もあった。 アキラに貪られ追い詰められる感触をシンにサれてる今も思い出してしまう。 シンは薄く笑いながら、楽しむようにそこをあじわう。 焦らし、責め、遊んでいるのが分かるのが、アキラとは違う。 違う。違う、それがわかって、だからだから、気持ちいい 気持ちいい 気持ちいい ミサキは叫ぶ。 「オメガは美味いけど、今まで食ったオメガの中でも一番美味い」 シンは感想さえのべる。 シンも比べながら楽しんでいる。 沢山抱いたオメガ達、そして、おそらく愛するベータとも。 シンの舌はアキラの貪欲さに比べると技巧的で、ミサキはその違いに感じてしまう。 アキラはもっと欲しがる。 アキラはミサキの僅かな震えるにも喜ぶ。 アキラはミサキを見つめて、その目を逸らすことはない。 アキラ。 アキラ。 だってアキラしか知らない。 だから比べてしまう。 比べるから、アキラの舌もそこに在ってしまう。 アキラの舌がしないこと。シンの舌がしないこと。 アキラの舌がすること。シンの舌がすること。 アキラとシンの両方に責められているようだった。 それらがミサキをいつも以上に乱れさせた。 ミサキは声を止められない。 気持ち良さに腰がカクカク揺れてしまう。 いつもは快楽に諦めたように身を任せているけれど、今日は快楽を受け入れるためにしているからこそ、どうすれば良いのか分からない。 股間にあるシンの頭を手で抱え込むけれど、アキラの太く真っ直ぐな髪ではなく、シンのさらりとした茶色の髪の感触にアキラではないと思い知らされ、だからこそそこで腰を打ち付けてしまう。 どうしよう どうしよう 混乱して叫ぶ。 シンは笑うだけだ。 でも。 シンの口の中で達した。 気持ち良すぎた。 気持ち良すぎて逃げようとした。 アキラではない人間に飲まれたのだとわかって真っ赤になった。 アキラが飲むことだって、ミサキは納得してないのだ。 だけどアキラはいつも勝手にするから・・・。 でも、今回はミサキはこれを受け入れていて・・・ ミサキは羞恥と快感がまだまだ終わらないことに泣く。 だけどシンはさらにミサキの腰を掴んで、残滓まで吸い尽くした。 達したばかりの場所をいやらしく嬲られ、ミサキは悲鳴をあげた。 「美味いよ、ミサキ。エロくて美味い。オメガは美味いな」 シンは口から零れる白濁を舐めさせした。 そう。アルファにはオメガはご馳走だ。 そして、オメガにも。 擬似ペニスは所詮、アルファが楽しむためのアクセサリーだ。 数少ないが女性と結婚したオメガもいて、擬似ペニスを使って女性とセックスするが、オメガにとって必要なのは、そこでの快楽ではない。 ベータと結婚するオメガはほぼ、アルファとセックスはする。 でなければ、ヒートを耐えられないし、アルファを求め過ぎて壊れてしまうからだ。 どんなに女性を愛していても。 オメガの快楽はアルファからしか得られない。 だから、シンが口で射精させたところで、ミサキの飢えはおさまらない。 ミサキは腹から浮かび上がる位深く、突かれたいのだ。 アルファのモノで。 だけど。 だけど。 アキラ相手だったら、「挿れろ」と言えるのに、シンに言うのは何故か気がひけた。 恥ずかしくてたまらなかった。 何よりこの間もずっとシンの恋人はシンとミサキがしているところを見ているのだ。 ニコニコと壊れた笑顔で。 しかし、シンは。 楽しんでさえいた。 この状況で。 脚の間から上がっていき、ミサキの顔をシンは見下ろす。 熱いシンの肌は、アキラの肌とは違ってた。 アキラの肌はもう少し硬い。 そしてもう少し冷たい。 でも、ミサキが完全におかしくなる時にはシンの肌は熱く熱くなるのだ。 肌は。 人によって違うのだとミサキはそんなことを思った。 みんな違う肌を纏ってる、と。 「アキラにもそんな顔みせてんの?良いねぇ・・・人の番だと思ったらたまんねぇな。エロい・・・」 シンは今度はミサキの身体の上にのしかかり、ミサキの乳首を指先でなぞった。 アキラの歯型がそこにのこっていた。 シンが触れたことのある乳首は、アキラが執拗に苛める場所で、昨夜も何度もそこだけでイカされたのだった。 シンの首にも吸いあとがあった。 恋人がシンにイカされながら夢中になってつけたものだろう。 ミサキはアキラに印をつけたことはない。 だが、好きな人が相手なら付けたいと思うのかもしれない。 シンがミサキの身体のアキラの歯型を指でなぞる。 ミサキもシンの首の吸いあとに触れた。 「ミサキ・・・それは」 シンが初めて動揺した。 恋人の神聖なるサインだ。 それに触れられるのは嫌だったのだろう。 でもそれをぼんやり笑って見ている恋人を見て、シンは少し悲しげに笑った。 「いいよ、ミサキもオレに印をつけて」 シンは言った。 「それで良いんだよね、キョウちゃん」 シンは恋人に言う。 「いいよ?」 壊れた恋人はニコニコ答える。 シンはため息をつき、そしてミサキはシンの首に両腕を絡めて、その喉を吸った。 恋人がつけた印の隣りに自分の跡をつける。 シンと自分の意志でしている印だ。 ああ。 なるほど。 ミサキは思った。 大事なサインをぶち壊すのは。 確かに楽しかった。 ミサキには、恋人を奪われたくない、そういう気持ちすら知ることが出来なかったから 暗い喜びが快楽になっていく。 シンと目が合う。 シンは笑って楽しんでいるくせに、そこにはミサキと同じ暗い炎がある。 ああ。 同志なのだと理解する。 綺麗な愛などないもの同志。 見つめあい、そして、キスをした。 ミサキには初めてのキスだった。 愛などない、でも、ドロドロとした共感と欲望だけがあるキスだった。 「挿れて」 キスの後、ミサキはねだった。 もう。 恥ずかしさも躊躇いもなかった。

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