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第114話

もう何度なのか分からない。 シンの恋人がすすり泣く声の中、シンがまたミサキの中に放ち、ミサキがそれに絶叫しながら感じ、ベッドに崩れ落ちた時だった。 部屋が揺れるような振動と、凄まじい衝撃音がした。 グギギィ ギイイイイィ グキャァ グガァァン 金属と金属が擦れ合う音と、重い物が倒れる音だった。 「ああ、思ったよりも早かったな」 シンが余韻を楽しむように腰を動かしながら呟いた。 絶頂からの緩やかな動きに、ヒクヒクと身体を痙攣させ、ヨダレを垂らしながらミサキはそれを聞いていた。 「あ・・・ミサキ、締め付けんなよ。もうこれ以上は出来ないのに。来ちゃったからね。でも・・・すごい良かったよミサキ」 シンはミサキの尻を叱るように叩きながら、名残惜しそうにミサキの中からゆっくりペニスを引き抜いた。 ミサキは引き抜かれる感覚にまた、声をあげた。 精液が零れ落ちる。 その感触にさえ、ミサキはイく。 抜かれても、快楽は終わらず、ミサキは震えつづけていた。 シンも吐息でまだ快楽の余韻に酔っているのがわかる。 でも、シンはミサキから離れた。 シンがため息をつきながら床から下着を拾って履くのと、ほぼ同時に、吠えるような声がした。 「ミサキ!!!」 名前を呼ぶ声は、断末魔の叫びのような声だった。 重く軋む声が突き刺さるように響く。 アキラの声だ。 ミサキはベッドの上で痙攣しながらそう思った。 シンのモノが抜けた孔が、名残惜しさにひくついていた。 あれほどしても、アルファとオメガにはまだ足りないのだ。 「良くここを見つけたな。まあ、見つけるとは思ってたけど」 シンが笑う。 床に何か、とてつもなく大きな質量のモノが叩きつけれた。 ミサキは余韻に震える身体で振り返る。 アキラがとても人間では片手で持てないような、何か巨大な機械を床に投げ捨てたのだとわかった。 これでドアを破壊して入ってきたのだとも。 決して人間が手で持って動かすような機械ではなかった。 だけど、アルファは人間ではないのでそうしたのだとわかる。 ドアを破るためだけにそれを使ったのだ。 アキラは憤怒で鬼のようになった顔でそこに立っていた。 凄まじい怒気を纏い仁王立ちしていた。 シンの恋人がその姿に恐怖で声をあげた。 当たり前だ。 普通の人間には怒り狂うアルファは恐怖でしかない。 怒り狂ったライオンの前に立つのと同じだからだ。 シンはズボンを履いて、震えて叫んでいる自分の恋人を優しく抱き上げた。 守るかのように抱きしめる。 その顔はこんな場面に似つかわしくないほど、甘く緩んでいる。 「キョウちゃん大丈夫だから・・・」 シンは甘く優しく囁き、先程まで恋人以外とセックスしてたとは思えない様子で、恋人を愛しげに抱きしめる。 「もう、終わったからね。キョウちゃん愛してる。これから2人で愛を確かめ合わないとね。キョウちゃんの身体でオレの愛を知ってね」 シンは囁く。 ミサキはゾッとした。 これから、シンは恋人を抱くつもりなのだ。 目の前で散々オメガとセックスしていたくせに、いやそれだからこそ、恋人を抱くつもりなのだ。 恋人が嫌々するように首を振ったが、シンはそうするのを止めないだろう。 「殺してやる!!」 アキラの声にミサキは鳥肌がたった。 番を犯されたアルファの憎しみはすさまじかった。 シンの恋人がまた悲鳴をあげた。 そして恐らくシンが一番その声に感情も身体も反応したはずだ。 アルファがアルファの攻撃予告に反応しないわけが無い。 アルファはアルファとの戦いのために生きているのだから。 「オレを殺す?バカだなアキラ。オレがお前を殺すんだよ。・・・でも今じゃない、だろ、アキラ?」 シンは唇を歪めて笑った。 シンは分かっていた。 今日、今、ここでは。 アキラはまだシンを殺さない、と。 だって。 ここにはミサキがいるからだ。 誰にも渡すことなどできない、アルファの大切な大切な番が。 他のアルファに犯されて、孔から他のアルファの精液を垂れ流がし、まだぽっかり孔を開いたまま、ベッドの上で痙攣しているからだ。 アルファは戦い以上にオメガを優先する。 この状態の番を置いて、他のアルファと戦うことなどできない。 そうシンは分かっているからだ。 他のアルファに抱かれてイカされたままの状態の番を置いて、殺し合いなどできるわけがないのだと。 「またな、アキラ。この部屋は貸してやるよ。ミサキは良かったよ。沢山ミサキの中で出したから、お前のペニスでそれを掻き出してやるんだな」 シンは笑った。 そして泣いてる自分の恋人を抱きしめた。 シンもまた、アキラと殺し合うより先にすることがあった。 ミサキの中に沢山だしたばかりだから、恋人を殺さずに抱くことが出来ると確信してるのだ。 シンは上半身裸のまま、恋人を抱き抱え、平然とアキラの横を通り過ぎていく。 ギリギリと歯を噛みながら、アキラはそれを見送る。 アキラは今は殺しに行けない。 だって、他のアルファに犯された、大切な番が乱れたベッドの上にいるからだ。 執着。 執着。 凄まじい嫉妬。 それがアキラの視線から溢れ出し、ミサキはそれに感じて震えた。 まだ触れられてもいないけれど、アキラはずっとシンに犯されている間も、ミサキの中にいたのを思い出してしまったのだ。 シンに触れられ、アキラの指を思い出し シンに貫かれ、アキラにそこで捏ねられることを思った。 シンのペニスも精液も。 アキラのそれを思い出させるものだった。 シンとアキラの違いは、アキラを思い出させるモノだった。 シンに狂いながら、同時にアキラにイカされつづけていたのだった。 だから。 今、アキラの視線に感じてしまう。 シンに抱かれた跡を見つめるその視線に。 壊れたドアから出ていくシンをアキラは止めることなど出来なかった。 アキラはベッドに近づく。 何も言わないまま。 重い気配が熱をもってやってくるのがわかってしまう。 アキラの目は金色で、焼き付くすようにミサキを見ているだろう。 シンのカタチに変えられたおとを教えるかのようにぼっかり空いた孔。 零れる大量のシンの精液。 シンが吸ってつけた跡。 噛んで舐めて吸われて、熟れた乳首。 それをアキラが見ているのがわかってしまう。 ミサキは何もされていないのに、アキラが近づく気配と視線だけでイった。 痙攣し、声をあげ、カクカクと腰を震わせた。 アキラはそれをじっと見ていた。 焼き付くような視線で。 苦痛のようなうめき声が聞こえる。 アキラは苦しんでいた。 そして、欲情していた。 ミサキは待つ。 それが始まるのを。 ミサキは今。 アキラが欲しくてたまらなかった。

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