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第117話

「すまない。すまない。でも。愛してる。愛してるんだ。ずっとだ。ガキだった頃からずっと・・・ずっと!!」 強く抱きしめて、アキラはミサキに叫ぶ。 身体を動かすことさえ出来なかった、寝たきりの少年の頃から、アキラはミサキだけを見てきたのだ。 それはもう、知っていて。 オメガで無ければ、身体が潰れてしまうような抱擁。 アルファを完全に受け入れられるのはオメガだけ。 凄まじい暴力と執着を、受け止められるのは、オメガだけ。 哀れなのはアルファなのか。 この世にただ1人在って、他のアルファを潰しながら生きていく。 救いは番のオメガだけ。 なんて、哀れな生き物 でも。 どんなアルファよりも、惨めなのはこのアキラなのだ。 アルファの本能すらアキラは拒んだ。 アルファの本能、オメガの拒否を受け入れること、はアルファの孤独を止めるためにも必要なことだったのに。 オメガの【ヒート】という非常事態以外では、アルファのその本能はアルファを救うためにある。 自分を選んだオメガと共にあることが、オメガにしか救いがないアルファには必要だから。 番が自分を受け入れないと言うことはアルファには救いがないということだから。 そう、ミサキとアキラの間にこれから先、無邪気で暖かいだけの信頼などはない。 でも。 でも。 「お前といるしか、ないんだよな」 あきらめにも似たミサキの言葉は。 アキラにはどんな愛の告白よりも。 決してこの先与えられることがない、赦しの言葉よりも。 アキラを歓喜させた。 「俺と居てくれる、のか!!」 アキラは慟哭した。 震えて泣くアキラの身体は。 こんなにも大きいのに何故か心細そうで。 だからミサキは初めて抱きしめているアキラの背中に腕をまわした。 セックスに夢中でしがみついたことはあっても、抱きしめられてると分かっている時にそんなことはしたことがなかった。 初めて抱きしめ返したアキラの肉体はこんなに巨大で分厚くて、熱いのに。 どこか脆く感じた。 そんなワケがないのに。 アキラは泣いて、震えていて。 とてもとても熱かった。 熱くて。 熱くて。 その熱に腹の奥が疼いて。 シンにイカされ続けた身体が、欲しくて欲しくてたまらなかった。 「居てやるからしろよ」 命令した。 他にどんな態度をとればいいのか。 まだわからない。 アキラが泣きながら笑った。 でも、そこまでだった。 どこかにアキラにあった頼りなさは。 ミサキが求めたのだ。 アキラが応えないはずがなく。 そして。 アキラはやはりアルファで。 「・・・・・・誰にも。誰にも渡さない・・・」 唸り声と、ミサキの脚が大きく広げられ、アキラの身体の下に組み伏せられたのは一瞬で。 シンの精液が零れる孔を最奥まで貫かれ、ミサキは串刺しにされながら、痙攣した。 ああ。 そう。 これが。 これが。 「自分の男」 のペニスだった。 ミサキは認めた。 アキラは。 ミサキの「男」だ。 それだけは。 認めた。 「オレの・・・モノに・・・ならしてやる」 そう言った。 シンより太いアキラのモノを締め付け味わいながら。 これは自分のモノだと思った。 シンの精液で溢れる孔をアキラがどんな思いでそこで感じているのか、と思うと、暗い悦びは確かにあって。 唸り声をあげて、狂気のように突き上げるアキラの嫉妬と痛みはそれでも確かにミサキを癒していて。 だから。 所有ならしてやる。 それならゆるす。 ミサキはそこを落とし所にした。 憎しみは消せない。 消さないだろう。 でも、アキラを憎みきることも、もうミサキには出来なかった。 「俺を・・・お前のモノにしてくれるのか!!!」 アキラが歓喜して叫ぶ。 アキラにはそれで良かった。 どんな形であれ、やっと。 ミサキが自分を受け入れてくれたから。 「俺は・・・俺は・・・お前のモノだ。全部お前のモノだ!!!」 アキラは叫んだ。 アキラは自分のペニスでシンの精液を掻き出している。 深く大きく動き、孔から零れさせて。 自分のカタチに戻そうと執拗に動く。 それが気持ち良すぎて、ミサキは頭を振って、叫び続ける。 シンとした時の二人から犯されるような感覚とはまた違っていた。 アキラの執着が。 どうしようもなく気持ち良かった。 アキラがそこで味わう苦痛と快楽がミサキには救いにもなった。 この男はずっとこの感触を忘れずに苦しむだろう。 他の男の精液の感触を。 でもそこで快楽を得たことも忘れることができないだろう。 他の男のカタチになった孔の感触も。 他の男の唾液がついた肌の味も。 でも、それでも、この男は。 アキラはミサキからはなれられない。 離れられないのなら。 それに名前をつけるのはミサキの仕事だった。 二人で生きて行くために。 「アキラをミサキが所有する」 モノとして。 そういうことにした 「何でもする!!俺はお前の為なら!!」 でも、アキラの声はもう悲鳴ではない。 「もっと・・・奥・・・」 ミサキは命じた。 シンの方が長い。 でもアキラのはもっと太くて。 何より。 誰よりもミサキを欲しがっていて。 ミサキの中で さらに大きくなって、ミサキはそれにヨダレを流して喜んだ。 「俺のが・・・俺の方がイイだろ?」 悔しげに怒鳴るアキラの声がミサキの脳を焼く。 初めて思った。 オレの男だ。 オレのモノだ。 自分のモノとして、ミサキはその孔で。 自分の男を味わっていた。 「オレの・・・モノになら・・・してやっても・・いい」 ミサキは繰り返した。 自分の男は美味かった。 やっと受け入れることができた。 これが欺瞞だとしても。 「お前のモノだ!!全部全部!!俺の全部はお前のモノだ!!」 アキラは歓喜しながら叫ぶ。 また泣いてる。 金色の目は、涙に濡れると甘いと知った。 本当に目が溶けてしまう、と思った。 ミサキの中からシンの精液を全て掻き出すつもりだ。 その動きの目的は明確で。 それがミサキには気持ち良すぎた。 ミサキの言う通り、奥も執拗に責めてきて。 「お前のモノだから・・・俺を傍に置いてくれ」 アキラの声を今は受け入れられる。 「置い・・てや・・る」 ミサキのやっと発した言葉にアキラは狂う。 嫉妬に焼かれて、でも、歓喜し、ミサキの中で快楽を貪り、そしてシンの痕跡に苦しむ。 引き裂かれるアキラをミサキはだから今、受け入れた。 傍に置いてやっても良い、そう思うことで。 「キス、しろ」 ミサキは命じた。 アキラが止まった。 アキラはミサキにキスしたことがなかったから。 喉の奥まで犯すくせに、キスはしたことがなかったから。 困惑したように見つめる金色の目。 それがおかしくてミサキは笑ってしまった。 ミサキの笑顔。 アキラはそれにも驚きすぎて途方にくれる。 「したかったんだろ。させてやる」 ミサキは言った。 命令でなら。 やっとアキラはキスできると分かっていたから。 アキラは震えながらキスをした。 唇を合わせるだけの、そのキスは。 他の男の精液が残る孔に突っ込んで、セックスしている時にするようなものではなくて、ミサキは笑ってしまったけれど。 アキラがさらに泣いたから。 余計に笑ってしまった。 「エロいキスは今度な」 ミサキは囁いた。 そして命じた。 「今は・・・オレを満足させろ」 アキラはその命令に従った。 ミサキはシンの痕跡を完全に消し去るまで抱かれた。 何度も注がれ、全身を舐められ、跡を上書きされ。 「お前だけでいい」 と泣いて言わされるまで、奉仕された。 「俺は お前のだ・・・お前の」 抱きしめられて囁き続けられ、それに閉口もした。 でも。 ミサキは。 やっと。 アキラと生きることが出来るようになった。 それは。 呼吸がちゃんとできる、そんな気持ちだった。 生きていく。 生きていくしかない。 ミサキはそれを受け入れた。

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