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第5話 お叱りと慰め

 ぽつりぽつりと呟く俺の言葉を歩はただ黙って聞いてくれていた 「で、俺はしばらく誰にも会いたくなくて1人になりたくて今まで避けてた」  そして今説明を終えたところだ 「いやぁ、なんかごめんな。心配かけたみたいで。まぁ、そういう事だから大丈夫だから気にしないでくれ」  歩を心配させたくなくて俺はできるだけ明るく振る舞う。でもそんな俺の反応に歩は 「っち。ったく、この馬鹿猫が」  雰囲気を変えて、眼鏡を外して胸ポケットに入れて口を開く。その声は明らかに苛立ちが混ざっている  今の歩はさっきまでの優しい委員長はなりを潜めて、言葉遣いも乱暴でピリピリした雰囲気を出している。そして何故か苦虫を噛み潰したような顔に不安とどこか悲しそうな感情がごちゃ混ぜになったかの様な顔をしている 「弘」  名前を呼ばれて俺は無意識にビクッと震えてしまった。普段は表には出さないけど周りに誰もいない時の歩はこんな感じだ。だから別に慣れてはいる。けど、こんなふうに歩が怒っているのは初めてみたので正直ちょっと怖い 「えっと、なにかな?」  なんとかそれだけを返したの俺に歩はギロっと俺の目を見て 「まず、お前の行動に問題があるだろうが。話を聞く限り、お前が軽い調子で話しかけたんだから相手も同じように軽く受け取ってもおかしくない。なのにそれに対してお前は腹が立ったって。ガキかお前は。理お前のその反応は理不尽だとわじゃねぇのか」 「……はい。確かにそうです」 「お前の反応は自分の思った通りにならなくて癇癪を起こして八つ当たりしただけだ」 「……はい。その通りです」  歩に言われた言葉は全部その通りで自分の事でいっぱいいっぱいで自分の行動を客観視できていなかったんだなとわからされる。あーもう自分が嫌になる  自分の情けさが嫌になって俺は自然と顔を俯けた  そんな自己嫌悪に陥ってると頭にポンっと何かが乗り、何んなのかと恐る恐る顔を上げると歩が俺の頭に手を置いていた 「けどまぁ、頑張ったな」  俺の頭を撫でながら#徐__おもむろ__#に歩が喋り始める。その声はさっきまでの鋭いものじゃなく委員長の時ともまた違う優しい声音で喋りだした 「気持ちを伝えるのはとても結構勇気がいる。相手に拒絶されるかもしれないんだからな。だから勢い任せだったとしてもお前は凄いよ」  歩の言葉を聞いて目元が緩み少しずつ熱が篭るのを感じる。気づいたら反射的にグッと強く唇を噛んでいた。そうしないと俺は耐えられなさそうだったから 「俺が言えた事じゃねえんだけどな。お前は他の奴に素を出さねえから反射的に気持ちとか本心とか隠そうとするんだろうな。それで告白の時はテンパってやらかしたんだろうな」  そう言った歩の顔は優しい顔をしている 「実弘」  そして俺の名前を呼び歩の優しい顔は変わらないけど真剣な目をしている 「悔いはあっても後悔だけはしないようにな」 「それってなんか違いがあるのか?」  正直同じなんじゃないのかって思う。俺の質問に対して歩は苦笑を浮かべている。 「まぁ、パッと聞いただけじゃ同じに聞こえるよな。まぁ、本来の意味とは違うかもだけどな」  そう前置きをして歩は話し始める 「後からああすればよかった。そうすれば上手くいったっていう感じで考える余地があったのが後悔。それで悔いはあの時の自分にとっては自分が最善だった。けど失敗したっていう悔い」  やっぱりほぼ同じなんじゃないか?そんな俺の考えが顔に出ていたのかまた歩は苦笑いを浮かべている 「やっぱり。同じに聞こえるか。まぁ、後から後悔する余地がない。その時その時の自分にとっての最善を選べってことだ」 「まぁ、それならわかるけど」  今度は偉く簡単にまとめたなぁ。そして歩は言葉を続ける 「まぁ、その選択をする為に自分の気持ちは自分がちゃんと分かってやれよ。自分意外の誰かが自分の気持ちを分かってやれるとは限らないんだからな。お前の気持ちを1番お前の近くにいる実弘自身が分かってやれ。そんで問題がないなら自分の気持ちに素直でいろ。そしてそれを今からしろ」 「えっと急にそんな事を言われてもなぁ」  今から正直にしろって言われても何をしろって言うんだ?あいつの事が悠真の事が口に出して好きだーって言ったりとかか? 「何か変な事を考えてそうだな。まぁ、それは置いといて俺が言ってるのは泣きたいなら泣いとけ」 「……えっ、どういうこと?」  急に泣いとけとか言われても。そもそも俺泣くのを堪えてるんだけどな 「そのままの意味だ。そもそもお前は何で今泣かないようにしてるんだよ」 「えっ、いやそりゃ恥ずかしいし」 「お前はもう少し自分の気持ちを大事にしてやれよ。そりゃ泣くのを堪える必要がある場面もあるだろうさ。けど別に今はその必要はないだろ。 だったら自分の気持ちに素直になってやれ。それに俺らは今更気を使うような間柄じゃ無いだろ」  俺の返答に対して歩は優しい顔のままではいたけど少し困ったような雰囲気が混ざり、声には少し呆れが混ざったような気がする 「け、けどそんな事したら歩に悪いし迷惑だろ」  俺は泣くのを一度堪えた後に我慢できずに泣いてしまうのは特に意味はないのに何故か意地が出てしまった 「はぁ」 そして歩の言葉に素直に頷けずにいると歩はため息を吐き、俺の頭に手を伸ばして頭をわしゃわしゃと犬みたい乱暴に撫でられ始めた 「うわっ!えっちょっ何なんだよ!」  歩の急な行動に驚いた俺はされるがままだったが直ぐに満足したのか長くは続かなかった 「ったく、お前は馬鹿だよな」 「いや、いきなりひどくね?」 「事実だから仕方ないだろ」 「えぇ、そこまでか?」  なんか今日は歩に色々言われ過ぎない気がするな 「あのなぁ、他の奴ならともかくお前は俺の性格をよく知ってるだろうが」  そう言った歩の表情はどこか困ったようでそれでいて照れ臭そうに見えた。歩の性格?何今で今それを出すんだ?でもパッと思い浮かぶのは 「………えっと腹黒?」 「お前がそれを言うな」  どうやら求めてたものと違うらしい。それならこっちか?少し頬が引き攣っていたが俺はそれに気づかずに続ける 「えっとそれが違うならドSとか鬼畜?」 「わざとかわざとなのか?」 「それじゃあ甘党?」 「いや、そういうのでもねぇよ。てかドSなのは認めるが俺は鬼畜じゃねえぞ。そもそも最後のはもはや性格じゃねぇし」  あっ、ドSは認めるんだな。なんか一瞬青筋が浮かんだような気もしけど今の俺にはそれを気にする余裕はなく、歩は口を開く 「他人に合わせるのとか人助けとか怠い面倒くさい事が嫌いな俺だぞ」  それだけ聞くとただのロクでなしに聞こえてくるな 「そんな俺があからさまに面倒な事に自分から手を出してるんだぞ。その時点でお前の事を面倒とか、迷惑なんて思うわけねえだろ。だから頼れよ。泣いたり、相談したり、話を聞いたりするぐらいは迷惑には入らねえし、もし、そう思ってもそれを分かった上で俺はそうしてるんだ。そうしたいって俺が思ったて事なんだからな。だから頼れよ」 「………俺あいつの事が本当に好きなんだ」  気づいたら俺の口からは言葉が漏れていた。歩の言葉に俺の中で抑えてたものが溢れてしまった。頭ではすぐに口を止めよう思った。けど、そんな俺の意思とは裏腹に俺の口は言葉を吐き続ける 「……何でかなんてわっかんねぇよ」  そしてその言葉と共に俺の抑えてたものは漏れだす。目元が熱くなり俺の視界が歪める。俺はまた顔を上げていられずに俯く

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