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第11話 踏み越えられた一歩
あの電話のあと少しして悠真が来て今は俺の部屋にいる。時間自体はすぐだったけど、俺の中では凄い長い時間に感じた。1分経ってはまた時計を見たりっていう行動を何度か繰り返したくらいだ
「よぉ、久しぶりだな。弘」
「うん。久しぶり!」
1週間ぶりにあった悠真は卒業式の時と大して変わった様子はなかった。けど俺にとってはそれでも好きな人に1週間ぶりに会えたっていうだけその事実で飛び跳ねたくなるに凄く嬉しいことだ
「ってさっき電話でも同じようなやりとりをしたな」
「あはは。そうだね。けどさっきは電話で声だけだったしさ。直接あったのはこれが1週間ぶりだから別物ってことで!」
よかった。直接会ってもしっかり話せてる。未だに緊張はしてるけど、やっぱり凄く嬉しいって気持ちがある
「ところで弘」
「うん?どうしたの?」
あの日の話だよね。僕から切り出したかったんだけどな。自分で言うのは勇気がいるけど、相手からどんな言葉が来るか分からないからどっちも怖いな
「その喋り方でいいのか?」
「………あーはは。えっとなんていうかその~」
やばい完全に忘れた。あの時普段隠してる口調で喋ってたんだった。八つ当たりしてやらかした事ばかりに意識がいっていて頭から抜け落ちてた
「あの時のお前はいつもと口調が違ったよな。多分あっちがお前の素なんだろ?」
疑問系ではあるがその口調はほぼ確信してる物言いだった
「いや、そのなんていうかあの時のは」
予想外の質問だったので咄嗟に良い返しが出来なかった。これじゃあ今から否定しても信じてもらえないだろう
どうしよう!?どうやって誤魔化そう。………いや、やめよう。もうバレたんだし、隠す意味はない。それにさっき決めたばかりじゃないか!今度こそ後悔しないようにするって!
歩にも励ましてもらったんだ!親友に背中を押してもらってまた同じような失敗をするなんて訳にはいかない!
「あぁ、そうだな。けど普段のも一応素なんだよ」
だから隠し事はしたりしない。いい奴に見せようとはしない。ちゃんとそのままの自分で気持ちを伝えるんだ
「えっ?マジか。だってお前悪口とか言わねぇじゃん。だからてっきりあれが素なんだと俺は思ったんだけどな」
「あぁっとなんていうかたまに口が悪くなるのを隠してたり、ちょっと積極的に喋りかけに言ってはいるけど、あくまでも少し気をつけてるだけで普段の俺は素の性格なんだよ」
「へぇ。じゃあ普段はあの下手な悪口を思っても隠してるのか」
「うわぁ!それを言うな!ってかお前まで同じような事を言うな!そもそも忘れろ」
なんで余計な事まで覚えてるんだよ!恥ずい。ってか好きな奴にそういうの知られるってきついんだが。でもそういうのを隠さないって決めたばかりだし。あぁ、もう何でよりもよってその話題がでるんだよ!
「いやぁ、それは難しいだろ。だってあの時のお前って今までとキャラが違いすぎたしな。忘れたくても忘れられないって」
うっ、それはなんとなく分かる。だって俺も歩の#外行き__悪魔モード__#の時と#そうじゃない__委員長モード__#の差によく驚いてるし。あいつよくもまぁ、眼鏡をかけるだけであんな一瞬で切り替えられるよな
俺と違ってもうほぼ別人レベルなのに
ってこのままじゃ話が逸れまくる!今日はちゃんと話し合嬉しいって決めたんだ
「うぅ。そ、そんな事よりも!今日はあの日の続きな話したいんだ」
恥ずかしいのと話を戻す為に少し強引に話題を変えた
「あの日も言ったけどもう一度言わせてくれ」
俺は悠真の目を見て一言一言気持ちを込めて声を出す
「俺は悠真が好きだ」
悠真の顔はあの時困ったような顔をしていた。けどあの時と違ってこれは2回目だ。だから悠真は俺の気持ちを知っている
「だから俺と付き合ってほしい」
気持ちを伝える事が怖くて途中で何度か目を逸らしてしまいそうになってしまう。それだけじゃなく、またあの時見たいに途中でおちゃらけて逃げてしまいたくなる。これが2回目の告白だっていう事実が俺の恐怖心を更に煽るから尚更だ
でもよかった。今度はちゃんと真剣に自分の気持ちを伝えられた。少し安心をしたがまだだ。俺の告白に対して悠真は相変わらず困ったような顔をしている
「あぁっと前にも言ったけどよ。試しに付き合ってみるのもありなんじゃね?」
そして同じように前と変わらない返答が来た。あの日の俺はここで軽く考えているような態度の悠真に八つ当たりをした。けど、それじゃあ後悔する。だからちゃんと話し合わないと
「男の俺でもか?」
「まぁ、どっちかというと男だからだよ」
どういう事だ?
「俺は今まで女子が好きだったし、急に男に告白されても考えたことがなかったからわかんねーんだよな。だから試しに付き合ってみるのもいんじゃねぇかと思ってさ。もしかしたらダメかもしんねぇけど、男だからっていう理由でお前の事振りたくねぇんだよ」
あっ、そうだったのか。ちゃんと悠真なりに考えてくれてたのか。なのに俺は話を聞かずに早とちりして八つ当たりしてたのか
その事を知ってバカな自分が嫌になる。けどそれ以上に好きな人が自分の事を真剣に考えてくれた事が分かった。それが何よりも凄え嬉しい
「だから、どうなるかわかんねぇけどそれでもいいなら俺たち付き合ってみねぇ?」
もしかしたら駄目かも知れない。けどそれでも好きな人と付き合える。やらないでいたら多分俺はこの先ずっと後悔するし、この先も前に進めなくなる。そう思ったから、それが嫌で俺はあの日の告白をしたんだ。だったら俺がする返事は決まってる!
「あぁ!付き合う!」
俺は反射的に声を張り上げて悠真へ付き合う意思を伝える
「それじゃあこれからよろしくな弘」
必死な俺に対して軽い調子で答える悠真に未来に対する不安とこれが現実なのかという実感が持てない不安が俺の中で募る
「うん!よろしく悠真!」
けど悠真がちゃんと考えてくれている事は分かっている。それに不安になるくらいだったらこれからどうするかを考えたり、行動を起こしたりしないとだよな
まさかあの振られるつもりだった卒業式での告白。あの日のあの終わり方からこんな事になるなんてな。いつか駄目になるかも知れないお試しの関係。どうなるか分からない不安定な俺達の新しい関係だ。でも今くらいは好きな人と付き合えるようになった事を喜んでもいいよな
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