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第4話 人ってわからないもんだよな
君と寄り添う
4話人ってわからないもんだよな
「かわいそうだなって思ったから?」
響のその言葉を聞いた瞬間さっきまで俺の中の心情の殆どを占めていた羞恥心と顔の熱さは見る影もないほどに消えていき感情が冷めるのが分かる。
そしてそれと同時にさっきまでとは違う感情が湧いてくる。ぐつぐつと腹の底から湧いてくる不快なこの感情。あぁ、これは怒りだ
「あっ、あとさっきも言ったけど酔っていたときの駆がかわいかったからな。それに俺今フリーだしちょうどいいだろ?」
軽い調子で響が言葉を続ける。一応は内容は理解している。だが正直どうでもいい。いや、どうでもよくはないな。先程の言葉をようやく飲み込めてくると沸々と怒りが湧いてくる。
怒るっていうのは疲れるし何より面倒だ。だから普段は怒りの感情が湧かないように意識をしてる。けど今は頭が冷えてるのにそれでも収まらない程に俺は今ムカついてるんだ。何より俺は今この感情に蓋をしたくない
「ふざけるな」
淡々としたものだったがその声は自分でも驚くほどに低い声で明らかに怒気が孕ませているものだ
気づいたら口から言葉が漏れていた。どうやら俺は自分で思っている以上に腹が立っているみたいだな
「え?」
響の口から間抜けな声が漏れる。悪いがそれに構ってやれる程今の俺に心の余裕はない。寧ろその反応に余計に腹が立つし気にするつもりもない
「かわいそうだからって理由でお前は付き合うっていうのかふざけるのも大概にしろよ」
俺は変わらずに淡々とした口調で話す。多分今の俺のは今まで出した事がないような声が出ている
「つまりは同情したから慰める為に付き合おうって言っただけだろ」
「え、いやそんなつもりじゃ」
「どう考えてもそうだとしか言えねぇだろうが。俺はそんなにかわいそうだったか?そんなにも1人じゃ何もできないようにみえたか?だったらお前の目は節穴だな。確かに辛いし怖いさ。不安で押し潰されそうになることもある」
本当にそうだ。俺は人間関係っていうのは綺麗なものだって馬鹿みたいに信じきってた時期が俺はあまりにも長い。だから余計に足枷になる可能性のある自分がゲイだって事実には自覚した時からずっと悩んでいる
「けどなぁ同情されて誰かに助けてもらわないと立ちあがれなくなるほど俺は弱くねぇんだよ!」
気がつけば俺は心の底から叫んでいた。そんな風にするつもりはなかった。一度出してしまったからか収まりそうにない。そもそも収めるつもりもない
「ウジウジしたって仕方ない。だから何度も折れそうにになっても俺は自分で立ち直って、自分の幸せの為に俺はちゃんと俺なりに前を向いてるんだよ!!」
多分今まで溜まっていたものが今日の怒涛の出来事と響の言葉で溢れたんだろうな
叫んだり、大声を出すなんていつ以来だろうな。多分一年以上は空いてるだろうな
俺の言葉を聞いて響は最初は大声に驚いた肩が跳ねたがそれだけだった。今はキョトンした顔をして
「えっとなんかごめんな。けど本当に同情とかではないからな。ちゃんと真剣に付き合うでいるからな」
なんて事を響は言い放った。
「信じられる訳ないだろ」
それが俺の答えだ。というかこの状況なら誰でもこんな反応になるだろ
「え、なんで?」
………こいつが今まで沢山の彼女が出来て、何度も別れた理由が分かった気がした。こいつは具体的にどうとは言えねえけどどこか倫理観が欠けてるんだ
けどこいつ自体は根っからのいい奴だから周りの人間は俺を含めてそれには中々気づけないんだな。………多分あいつなら気づいてそうだな。いやまぁ、今はどうでもいい
「理由は自分で考えろ。今回の事はお前が間違えて酒を出したとはいえ、酔った俺が色々やらかしたのもあるからおあいこだ」
正直不服だ。けどさっきも言った通り響が間違えたせいで酒を飲んだとは言っても俺迷惑をかけたのは事実だ。それにズレてるこいつと話しても無駄だと思うし面倒だ
「えー、駆は別に気にしなくてもいいと思うけどな」
……とりあえずは今こいつに何か言っても無駄だな。とりあえず俺が今とる行動は
「でもって今日あった事は忘れろ」
「………え?」
これが1番最善だろ。
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