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第5話 拒否できないって思わせる奴がある意味一番厄介なのかもな
俺の口から出た言葉を理解できていないらしく、響はきょとんとした反応をしているがそれを気にするつもりは俺にはないのでそのまま言葉を続ける
「今日まであった事をお互いに綺麗さっぱり忘れて、もう関わるのはやめようぜ」
これが一番いい選択だ。こいつは少しズレてるところはあるけど常に誰かしらがそばにいる。そんな生活をしていればきっと俺の事なんてすぐに忘れるだろ
多分だけどこいつには人たらしの才能がある。それに加えて心から他人に興味を持って誰かが喜ぶのが好きで人が喜んでいれば自分の事のように嬉しがる。そんな奴だ
だからそんな風に根っこがいい奴の響ならきっといい奴が自然と集まるだろう
そしていつかそいつらの力を借りて自分のズレてる箇所に気づけるだろ。上手くいけばそのまま自分に向き合える
その集まる中に俺はいないしいるつもりもない。だったら今日の事は忘れた方がお互いの為だ
酒に酔っていきなりそういう関係を持ったとか黒歴史でしかない。それだけじゃない
「お前が意図的にやってないのは分かってるし、酔っていたとしても俺から誘ったならお前ばかり責めるのはお門違いだってのは分かってる。けどなぁ、お前に腹が立つんだよ。それだけじゃねぇ。そんな事をした自分自身にも腹が立つし、情け無いはでこれまで通り振る舞える気がしねえんだよ」
わざとじゃなくても響に対しても自分の情けなさにも心底腹が立つ。これから先こいつに普段通りの対応が出来る気がしない
「それにお前は違うって言ってたけど俺にはどう考えても同情で付き合おうって言ったようにしか思えない」
だからお互いに今日までの事を忘れて今後は関わるのをやめようって提案したってのに
「え、何でだよ?俺はちゃんと真剣に付き合うって言っただろ」
なんて事を言いやがった。話聞いてたのかこいつ?
「だからそれが信じられねえって言ってんだろうが」
「だったらさ試しに少しだけ付き合ってみようぜ!それでその後にまた考えてくれないか?」
「………は?」
何言ってるんだこいつ。正気か?
「いや、は?じゃなくて。そこはうん!だろ」
「いや待て待て。何でそうなるんだよ!」
本気で何でそんな考えになるのか意味が分からん。そんなに拘る理由なんてないはずだろ?
「え?さっきから言ってるだろ。真剣に付き合う気でいるって。でも駆はそれが信じられないんだろ。だったら試しに少しの間俺と付き合って俺の気持ちを判断してくれよ」
…………こいつ本当にズレてなかったら今まで付き合ってきた彼女に振られたりすることもなかったんだろうな
「お前なら俺よりいい奴なんて選び放題だろ。なのになんでよりにもよって俺なんだよ」
マジで何で俺なんだ?こいつなら男でも女でもどっちでも相手には困らないだろ
「え、そんなの駆がいいと思ったからに決まってるだろ?」
いや、そんな当たり前だろ?みたいな表情で言われても何とも言えねぇよ。てかそんな風に言うなよ。もしかしたは本気なんじゃないかって思いたくなって俺の気持ちが揺らぐだろうが
「だから今日の事は忘れろとかお互い関わるのをやめようとかいうのはやめてくれ」
真剣な表情で言葉を続ける響。俺を見つめるその瞳からいつのまにか視線を離せなくなってしまっていた
「せめてチャンスくらいくれてもいいだろ?」
どこか縋るような言い草と願うような顔で響は俺へと言葉を告げる。正直戸惑いが強い。なんでこいつがこんな反応をするのか、分からないしこいつのこんな顔を初めてみて上手く頭が回らない
「………分かった。」
気づいたら俺の口からはそんな言葉が漏れていた。
「え、本当に!?やった!」
大袈裟なほどにけど素直に喜びを口にする響。そんな響を見ながら俺は少し考えに耽っていた
響の言葉を承諾するつもりなんて全くなかった。それなのに、頷いてしまった。何でかは分からないけどこいつの頼みは何となく叶えたいって思った
ったく人たらしの奴がこういうのを持ってるのは面倒くさいな。しかもこいつは無自覚だから尚更質が悪い
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