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第9話

男を喰らっていたその子が、満足したように顔を上げた。 腹部と片腕は食い尽くされていたが、さすがに成人男性一人を丸ごとは食べれなかったらしい。 少年に向ってその子がニコニコ笑った。 血まみれなのに無邪気な顔で。 少年は怯えることなく、その子に近付いた。 その子が両腕を伸ばしてきたから抱きしめた。 「帰してあげる」 血まみれのその子にキスをした。 その子もキスを返してくれた。 血の味のするキス。 メイドが部屋に来ることはないはずだ。 血まみれのその子を担いで、部屋に繋がっている浴室へ連れていき、綺麗にした。 血と。 男の精液や色んなものを流し綺麗にした。 でも。 男の精液がその子の穴から溢れてたから、赤面した。 その子はすぐに理解して、指で孔の中を掻き出していく。 男の精液はたっぷりとそこにあり、シャワーのお湯が流れる浴室を汚した。 切れ目から、ピンクのペニスが勃ちあがる。 その子が指を出し入れするのに喘いでいて、そしてぺニスもピクピクしてて。 それに少年は息を飲んだ。 また勃起してしまう。 その子がまた少年のソコへと手を伸ばしたけれど、そっと手を掴んで首を振る。 「いいんだ」と。 もう誰にもその子を犯させたくない。 その誰にも、に当然自分も入ってて。 でも。 その子が中を自分で掻き出しながら、自分のペニスを擦り達するのを見ながら、少年も自分でしてしまった。 浴槽の外で膝をつき、中にいるその子を見つめながら。 これは許して欲しかった。 でも許されない、とも思った。 でも。 互いに射精し終わったあと、その子とキスをした。 どちらからでもなく、自然に。 何度も何度も唇を重ねて。 強く抱きしめあった。 それで十分だった。 綺麗になったその子のために服を探した。 部屋のクローゼットにあったのはほとんどが女の子の服だったが、男の子の用のシャツや上着もあった。 ついでに血で汚れた自分の服も少年は取り替えた。 さすがにその子の着れるズボンはなかった。 尾鰭なのだから。 シャツと上着を着せた。 綺麗な長い髪もペーパーナイフを見つけて切った。 それを着せて、車椅子にのせ、尾ひれを隠す長いひざ掛けを掛けた。 そして自分の帽子を被せて、青い髪と美しい顔を隠した。 車椅子に乗った少年。 すぐバレてしまうだろうが、村人はここで何があっても関わろうとしないだろう。 余所者の話だから。 少年が関わっているとわかるまでは。 少年は決意していた。 この子を海へと返すのだ。 それだけが正しいこと。 そのためだったら何でもする。 その子がしてくれたキス。 それだけで、何だってできる。 もう分かってた。 少年はこの人魚に恋していた。 だから。 なんだってできた。

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