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さすがの類でも、那智に逆らうことはできないのだろう。類は那智の言う通りにその場に立ち尽くすことしかできないようだった。
「類達には最後まで悪役としての役目を全うしてもらわないといけなかったのに、残念だよ。お前達が咲良に余計なことを教えなければ、こんなことにならなかったのにね」
「ほら、咲良も余計なことを聞いてごめんなさいって、ちゃんと謝らないと」
類が、目の前に、いる。那智と繋がっている俺を、見ている。
時折目が合うと、下唇を噛み、目線を逸らすのだ。
「お、ねが・・・っ、みな・・い、で・・・ぁッ・・」
ベッドに膝立ちの状態で、背後の那智に犯される。那智の息が耳にかかり、腰を掴む手が熱かった。
「何を言ってるのかな、咲良。さっきよりも締め付けて。類に見られているのが良いんだろう?」
「い、や・・ッ・・、や、だ・・・、ーーぅ・・っ、」
もやは何度目だろうか。また達した俺は再びベッドを精液で汚すのだ。おかげでベッドもぐちゃぐちゃだった。
「・・ほら、またイったね。気持ちいいね、咲良」
「っ、も・・・、や・・・・・ッ」
何度懇願しても那智は止めることはなかった。結局俺の意識が途切れるまで、類の目の前で犯され続けたのだ。
・・なんだか、温かい。気持ちいい。頬を滑る手の平の心地良い感覚に、うっすらと目を開ける。
ベッドの縁に腰掛けている那智は、目を覚ました俺に気が付いたと思えば、がばっと抱き着いてくるのだ。
「っ咲良・・・、すまない、また、やりすぎてしまった・・・、」
目が覚めた俺を抱き締める那智は、壊れ物を扱うかの様にぽんぽんと優しく頭を撫でる。
気絶するまでしてきた後の那智は、まるで人が変わった様に優しくなる。
先日扉の前で初めて気を失うまで犯された時も、俺が目を覚ました後、謝りながら俺の介抱をしていたのだ。
那智の逆鱗のスイッチが切り替わるタイミングは、俺が那智以外を想う行動にあるようだ。今回は那智がトイレに行っている時に、足腰がガクガクして満足に動けない体を引きずって部屋から抜け出そうとした俺を、早々にトイレから戻って来た那智に見つかってしまったのだ。
そして那智は朝日に会いに行こうとしたのかととんでもなく怒り、挙句の果てには類の目の前で犯されることに繋がった。
正直、犯してくる時以外の那智は優しい。犯されている時と優しい時のギャップが激しく、優しい時が物凄く優しく見えてしまうのだ。
こうやって精神を支配されていくんだろうなと思った俺は、ほんの少しずつ那智に染まっていってるのかもしれない。
「咲良、ごめん、咲良。好きなんだ・・・。本当に、咲良が好きなんだ・・。許してくれとは言えない。どうか、嫌いにならないで欲しい・・」
「なち、先輩・・」
もしかすると俺の事を嫌いな朝日を想うより、少し行き過ぎな愛情の気もするがちゃんと俺を愛してくれる目の前の那智の方がいいのかもしれない。
俺が朝日を好きでいても、どうせ朝日は俺を好きではないのだから。
・・・もう、いいや。愛してくれるなら。
好きとかどうとか、なんだか疲れてしまった。
俺の肩に顔を埋めている那智の耳を撫でると、ぴくっと肩を揺らした那智はこちらに顔を向けた。
那智の頬に指先を添え、ちゅっと口付ける。唇の先が触れるだけの、何の色気もないキス。・・なのに、なぜそんな真っ赤な顔をして、こちらを見るのか。
・・・へえ。こんなに単純なのか、男って。
まあその方が、都合がいい。
そして俺は、この男が望む台詞を吐くのだ。
「嫌いになんてなりませんよ」
ーー好きでもないけど。
そして再び、目の前の男に口付けるのだ。
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