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 朝日に、初めて嘘をついてしまった。  具合が悪いから先に帰ると未だケンカ中の朝日に言うと、「そうか」とだけ言われ、そっけない返事に泣きそうになった。  そんな俺は今、学年の違う廊下を歩いている。  放課後だから人は少ないが、学年が違うのと生徒会に入っているというのもあり、俺はかなり目立っていた。  そんなこともあって、俺は足早に結城のいるクラスに向かった。  目当ての教室のドアを開けると一人の人物が中心になり、複数人で話が盛り上がっているようだった。  取り繕いモードの渦中の結城は、ドアを開けた音に反射的にこちらを向くと、俺と目が合ったのだ。  すると結城の表情がぱっと変わり、「咲良先輩」と、心なしか嬉しそうにこちらに駆け寄って来るのだ。 「来てくれたんですね」 「お前が来いって言ったんだろうが」 「ま、そうなんですけど。・・ちょっと待っててください」  机に荷物を取りに行った結城は友人達に別れを告げるが、友人達はこちらをちらちらと見ているようだった。それをいなした結城はこちらに戻って来ると、「行きましょうか」と俺の横に並ぶのだ。 「・・お前、結構人気なのな」  二人並んで廊下を歩き出すと、結城はふっと鼻で笑うのだ。 「生徒会に入ってるし勉強もそれなりにできるから勝手に群がってきてるだけですよ、あいつら。案の定先輩が来た瞬間、皆先輩に興味移ってましたし」 「・・あ、もしかして、妬きました?」 「ッんなわけ・・」 「ま、ですよね。・・・・それはともかく、雑談なんて随分と余裕じゃないですか?これから俺に抱かれるのに」 「・・・まだ昨日の返事してないだろ」 「その表情を見れば分かりますよ。これから俺に抱かれようとしてる顔、してますから」 「っ、・・どんな顔だよ」  すると結城は背に手を回し、ぐっと腰を抱くのだ。ぎょっとした俺はそんな結城の手をパシッと振り払った。 「・・・おい、ここではやめろ」 「あは、すいません。早まっちゃいました。・・・寮、行きましょうか。俺の部屋でいいですよね」 「・・ああ」  ーーこれで、いいんだ。  俺が結城に体を差し出すだけで、朝日は傷付かずに済むんだ。    ーー朝日の知らないところで。 「咲良先輩、着きましたよ」  結城の声にはっとした。いつの間にか部屋の扉の前にまで来ていたようだ。  その場から動けないでいると、結城は大丈夫ですか?と顔を覗き込んで来るのだ。 「・・もしかして、緊張してます?」 「大丈夫、すぐにわけわかんなくしてあげますから。先輩はただじっとしてるだけでいいんで」  そしてガチャっと扉を開けた結城は俺の手を取ると、そのまま中に引き入れるのだ  バタンと扉が閉まると同時に、扉に体を押し付けられ、結城の体が密着する。  ぎゅうっと抱き締められると、背に回された手をズボン越しの割れ目にするっと這わせてくるのだ。  結城の肩に顔を押し付けながらも熱い吐息が、はあ、と漏れてしまう。  するとテント張った結城のものがへその下にごりっと当たった。  まじか、とぱっと顔を上げると、熱持った結城の瞳がこちらをじっと見つめているのだ。 「・・・咲良先輩」  そのままゆっくりと顔を近付けてくる。結城の唇を受け入れるように、顔を上げ、目を閉じた。  すると暗い瞼の裏、朝日の顔が浮かんできたのだ。  ーーーーやっぱり、駄目だ。 「ーーごめん」  あと数センチで触れそうだった結城の唇を、ばっと両手で塞いだ。結城は目を見開き、とても驚いているようだった。 「俺・・・、朝日に正直に言う。だからもう、バラすなりなんなりしてくれ」  すると結城の唇を塞いでいた俺の両手を掴んだ結城は、そのままダンっと扉に押し付けてくるのだ。 「っ痛、」 「・・・もう、遅いんですけど?」  押し付けられる手が、痛い。目の前には結城の顔。その表情は、いつもの結城と違った。  ーーーー怖い。こんな結城、見たことない。  これは、とんでもないことになってしまったかもしれない。結城に睨まれながらも、上手く回らない頭でどうしようと、必死に考えた。

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