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09※

 これはかなりまずいかもしれない。  だが、こんな状況でありながらも那智は落ち着いていた。  俺と目が合うと大丈夫だから、と頭を撫でるのだ。 「え、那智先輩·······、」 「ーーまさか、AVでも見てんですか?音量もう少し落とした方がいいですよ」 「ちなみにさっきからめちゃくちゃ聞こえてましたけど気付かないフリしててあげたんですからね」  そんなため息混じりの朝日の声が扉の奥から投げかけられた。  この状況がバレたわけではなく気が抜けた俺は「AV·····?」と思わず呟くと、俺の下にいる那智はぶはっと吹き出すのだ。 「ああ·····、すまない。静かにしていたつもりなんだけどね」 「意外ですね。先輩もそういうの見るんですか」  那智はまあね、と返事をすると何にせよ、と続けるのだ。 「バックに君がいるんだ。何かに巻き込まれることはないだろう。眠そうにしていたから、そのまま生徒会室で寝過ごしてしまった可能性はあるね」 「この時間だともう学校の中には入れないし、咲良からの連絡を待つしかないんじゃないか?」  扉の先では少し考えた後に朝日は「確かにそうですね」と呟いたのだ。 「じゃ、とりあえず咲良からの連絡待ってみることにします。夜遅くすいませんでした」  那智は「ああ、大丈夫」と返事をすると、朝日は扉の前から去ったようで、足音が遠のいていった。 「ーーぁ、····ッッ」  ほっとしたのもつかの間、腹の奥にまで入っている那智の性器に凝りをぐぐっと圧迫されるのだ。思わず腰を引こうとするが、がっちりと腰を掴まれている為それは叶わなかった。 「っや、······っ·····、それ········ッ、ぁ·····っ」 「·····ふ、凄く締まってるね。朝日が近くにいて興奮したんだろう?やらしいね、咲良」 「·····し、てな··········っ」 「嘘つき」  次の瞬間、行き場もなく揺れていた性器をしごかれ、カリでぐちゃぐちゃと凝りを潰されると身体中の熱が先端に集まるのが分かるのだ。 「ーーや·····ッ、あ·····、ぁ·····っ、あ·····、ぅ·····っ」  俺は気付けば那智の胸に手を起き、那智の動きに合わせて腰を揺らしてしまっていた。そんな俺を見る那智は愛おしそうに頬を撫でるのだ。 「ぁ·····、ッひ·····ぁ·····っ、いっ·····く、なち·····っ、せん、ぱ·····、い·····、く·····っ」 「ああ、いいよ、咲良。見ててあげるから、イってごらん」 「ーーーっあ··········ッッ」  瞬間、心臓がどくんと高鳴ると同時に先端からどろっとした体液が漏れ、中で跳ねた那智の性器からは熱がどくどくと流れ込んでくるのが分かり、体がぴくぴくと痙攣してしまうのだ。  それを下から見ている那智は満足気に微笑むと、 「こっちへおいで」 と俺に向かって腕を広げるのだ。  体の力が抜けて何も考えられない俺は吸い寄せられるかのようにぽすん、と那智の胸に体を預けると、「意地悪してすまなかったね」と那智は優しく抱き締め、柔らかく頭を撫でるのだ。  朝日がいたのに無理やりしてきた那智にむっと口を尖らせていると、那智の衣類越しにも関わらず、那智の心臓の音が伝わってくるのだ。  一見冷静で俺を翻弄しているように見えるこの男は、伝わってくる心臓の音が意外に早く不覚にもきゅんとしてしまった。  すると那智はそんな俺の表情を見て思考を読み取ってか、頬をかああと赤く染めた。  そんな那智に思わず頬を緩めると、那智は「なあ、咲良」と頬を撫でるのだ。 「咲良に誘ってもらえて本当に嬉しかった」 「正直、お前がまたこうして俺の部屋にいるだけで心臓が持ちそうにないんだ。格好悪いけどね」  俺の前髪をするっとすくい、額にちゅ、と口付ける那智と目が合うと、なんだか照れくさくて堪らなかった。 「·····俺のでよがって腰を揺らしていたのも可愛いかったし、ずっと一緒にいたいと思っているんだ。·····なあ、朝日じゃないと駄目か、咲良」 「·······那智、先輩」  朝日がいるのにヤられたのはむっとするが、正直めちゃくちゃ気持ちよかったのと、とにかく、この男は顔が良いのだ。  何と返事をすればいいのか、那智に見つめられながら考えるが、疲労が溜まっている頭では思考がうまくまとまらなかった。  そんな混乱している俺を見る那智はくすっと笑った。 「返事はすぐじゃなくていい。とりあえずこのまま一緒に寝ようか」  抱きしめられながら撫でられるのが疲れている体にはあまりにも心地よく、その言葉を聞いたのが最後、俺の意識はまどろみの中へと消えていってしまった。

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