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「·····ん、」
ゆっくりと目を開けると白い天井。なんだか妙に視線を感じ顔を横に向けると、俺の視線に気付いた弥生はこちらに優しく微笑むのだ。
「兄さん、おはよう。よく寝てたね」
腰に腕を回され引き寄せられると、瞼にちゅ、口付けられた。
そして顔を離した弥生は俺と目を合わせると「昨日はごめん」とぽつりと呟くのだ。
正直、体はだるく鉛のように重いが、そもそも最初に煽った俺の責任でもある。
「いや、最初に色々言った俺も悪いし気にしなくていいから」
「·····それに、まあ·····、悪くはなかったし·····、」
昨日の弥生とのことを思い出すと顔が熱くなってしまう。
するとそんな俺の様子を見た弥生は背に腕を回すと、がばっと抱き着いてくるのだ。
「俺も、兄さんとするの凄く気持ちよかったよ」
「·····ん、」
疲弊した体には弥生の温かい体が心地よく、すり、と頬を寄せると弥生はふっと柔らかく笑い、優しく頭を撫でるのだ。
「·····ねえ、兄さん。本当に俺に一途になってくれるの?」
そういえばそんなことを言ったな。あの時はイラついていてその場の勢いで言ってしまったが、生徒会の他の三人ともそんな約束はしているし、朝日や三人にバレなければ大丈夫だと思い、こくりと頷くと弥生は抱き締める手に力を入れるのだ。
「·····嬉しい。兄さん、ずっと好きだった·····」
「·······俺も好き。那智先輩とはもうしないし、朝日とも別れるつもりだから······」
今まで弥生の好意に気づかなかったわけではない。だが、俺はどこかで見て見ぬふりをしてしまっていた。例え嘘だとしても、その穴埋めをしなければとは思った。
俺の部屋から出ていく弥生を見送ると、すぐに朝日に具合が悪くて自分の部屋で寝てしまったという旨の連絡をした。朝日はおそらく俺が部屋に来るのを待っていただろうから。
するとそんなことだろうと思った、具合は大丈夫かとすぐに返信が来た。怒られなくて良かったと安心した俺は大丈夫と返信をした後に支度をしてすぐに学校へ向かった。
その日の放課後、類からの呼び出しがあった。授業が終わり、一人部活動の視察の業務へと向かった朝日に、生徒会室には一人で行くなよと釘をさされた。
朝日が生徒会室へ行かないなら尚更ちょうどいいと思った俺はいつものように朝日の言い付けを無視し、類が待っている生徒会室へと向かった。
ガチャっと生徒会室の扉を開けると、類は自分の定位置のソファに腰掛けていて、なにやらうなだれている様子だった。具合が悪いのかと思ったが、俺を呼び出したということは"そういうこと"をするということに間違いないだろう。
類は入って来た俺をちらっと横目で見るが、いつもと様子が違う類はこちらに近付いてこようとしなかった。
そんな類に首を傾げたが、とりあえず背後に回りぎゅうと後ろから抱き着いてみると、驚いたのか肩がぴくっと揺れるが、それ以上反応はなかった。
「先輩、今日はどこでヤる?また朝日の机?それとも先輩の部屋?それか体調悪いなら抜くだけでもーー」
類のシャツの上に手をするっと這わせると、その手をパシっと払われた。
「ーーいいよ、もう、そういうの」
そう冷たく吐き捨てる類に驚いたのもつかの間、類は入口へと視線を向けた。
「·····那智分かったでしょ。入ってきていいよ」
すると、ガチャっと空いた扉から神妙な顔つきをしている那智が現れた。
まずいと思いすぐに類から離れるが、逃げられないようにか、類にがしっと腕を掴まれるのだ。
腕を掴まれている俺は何がなんだか分からないまま二人に鋭い視線を向けられながら、その場から動くことができなかった。
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