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「·····おい、お前絶対頭悪いだろ」
すると椎名は屈んで俺の机に肘を置くと、むっと口を尖らせて上目で俺を見るのだ。
「ちょっと、それ酷くない?!成績は良い方だよ俺·····!」
「じゃあ何で昨日の今日でまた俺に構ってくるんだよ。今だって目立ってるしさ」
授業終わりの放課後、教室に残っている人がまばらになっている中、残っているクラスにいる奴らは俺と椎名を見ては何かを言っているようだった。
まあ、気持ちは分からなくもない。今俺と関われば確実に生徒会に目を付けられる。
しかし今日は休み時間が来る度に椎名が俺に付きっきりになっていたからか、生徒会の奴らは誰一人として俺の元に来なかった。那智の時のように騒ぎを起こしたくないからだろうか。まあ、それはありがたいんだが、それはそれで後が怖かった。
俺を見てはなにやらこそこそと噂をしている二人組をちらっと横目で見ると、目が合ったそいつらはそそくさと教室から出て行った。
そんな奴らを俺と共に見ていた椎名は口を開くのだ。
「···俺さ、ずっと咲良と仲良くなりたかったんだよ。でも今出てった友達にはやめとけってずっと止められててさあ」
「んで、生徒会抜けて朝日と別れたならチャンスだと思ったのに、今度は生徒会の奴らに振り回されてんだろ?昨日那智先輩に咲良取られた時も悔しかったよ」
俺が先に咲良と話してたのに···とぶつぶつと呟く椎名を見ると、その子供のような振る舞いに思わず笑ってしまった。
するとそんな俺の様子を見る椎名は何笑ってんの!と頬を膨らませるのだ。
「しかも那智先輩なんかやばくなかった?咲良にベタベタしてたし。あれ絶対俺への当て付けだよね。今思い出してもめっちゃ腹立つよ」
それに関しては前回、行為が終わった後に那智に言った。人前でベタベタするのはやめてほしいと。
だが那智は全く気にしていなく、牽制しただけだろう、と微笑んでいたのだ。
「·····お前さ、俺に構うなよ」
「なんで?」
「いや、分かんだろ。生徒会に目を付けられるからに決まってんだろ」
「那智先輩とか完全に敵に回したぞ、お前。あの人は特にやばいから。あと類先輩も。何か被害が及ぶ前に、俺には関わらない方がいい」
「分かったら早く友達追いかけてきたら」
じゃ、俺は帰るからと鞄を持って席を立つと、立ち上がった椎名に手をパシッと掴まれるのだ。
「·····おい、」
離せよ、と見上げると
「生徒会とか、そんなのどうでもいいよ」
と、椎名は俺の肩に手を置き、じっと目を合わせるのだ。
「それにさ、今日俺が咲良に付きっきりだったからか、生徒会の連中来なかったじゃん」
「じゃあさ、ずっと俺と一緒にいればよくない?」
「·····お前さ、俺の話聞いてたか?」
椎名に俺の声は全く届いていないようだった。そんな椎名に対して思わず深く息を吐いてしまうが、そんな俺に椎名は首を傾げていたのだ。
その後も俺の説得も虚しく、椎名は本当に俺から離れなくなった。
朝は部屋まで迎えに来て一緒に学校へ行き、休み時間は俺の机に来て他愛もない雑談をする。学校が終わると共に寮に帰るという生活がしばらく続いた。
最初は四六時中引っ付いてくる椎名に対して鬱陶しいなと、正直思っていた。
なのに俺はこいつの底抜けに明るい性格に、徐々に絆されていってしまったのだ。
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