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 椎名に名を呼ばれた瞬間、体の血の気が引き、息が詰まった。  類はそんな俺を横目で見ると俺の背に回している手にぐっと力を入れ、「ちょっと那智」と、入口の扉の奥にいる那智を見やるのだ。 「予定より随分と来るの早いんじゃない?もー·····、これから2回目始めようと思ってたのにさあ·····」  椎名の後ろから現れた那智は「すまないね、類」とくすっと笑うと、口元に手を当てていた。 「類の邪魔をしようとしたわけではないんだ、本当だよ。椎名くんが歩くのが早くてね」  おそらく笑っているであろう口元を隠す那智を見る類は絶対嘘でしょと怪訝な顔をしつつも、羽織っていたパーカーを脱ぎ、ふわっと俺の肩に被せるのだ。大きい類の上着のおかげで繋がったままの結合部は隠れたが、正直抜いて欲しくて堪らなかった。  すると椎名は「おい」と、今まで椎名の口から聞いたことのないような低い声で呟き、鋭い目付きで類を睨むのだ。 「咲良に何やってんだよお前··········ッッ!」  那智は今にも類に掴みかかりそうな勢いの椎名を後ろから掴み、ダンッとうつ伏せの状態で床に押し付けると「離せ·····ッ!」と椎名は暴れるのだ。 「椎名っ·····!」  そんな椎名の元へ行こうと類の肩に置いている手にぐっと力を入れた。すると、 「はいはい、咲良ちゃんは大人しくしてようねえ」 と類に手を掴まれてしまうのだ。  そして那智によって床に押さえ付けられ、刺すように睨んでくる様子の椎名を類はてかさ、と見下ろすのだ。 「·····君、椎名くん、だっけ?·····何か勘違いしてるみたいだから言っておくけど、俺、別に無理やり してるわけじゃないからね?」 「そりゃあ最初はね?君が探してるかもしれないからって、早く終わらせようとはしてたよ。咲良ちゃんもさ」 「でもだんだん気持ち良くなってきちゃったみたいで、すっかり俺とのセックスに夢中になっちゃってたよねえ。本当可愛いんだから、この子は」 「ね、咲良ちゃん」と、髪をすくわれてちゅっと口付けられた。そんな類に俺は顔を伏せることしかできず、何も言い返せなかった。 「っ、そんな····、わけ········、咲良が、そんなこと··········ッ!だって咲良は、俺とのこと考えるって·········、」 「あー·····、駄目だよ椎名くん。咲良ちゃんとちょーっとヤったくらいで彼氏ヅラしたらさあ」 「咲良ちゃんに嫌われちゃうよ?」  類はちらっと俺に目線を送ると「そうだよねえ、咲良ちゃん」と、わざとらしい笑顔を向けてくるのだ。  ーーちょっと待て。·····まさかこいつ、バラすつもりなのか、俺と生徒会のことを、椎名に··········、 「·····は··········、?」  すると類は、「何を言ってんだよ」と未だ類を睨んでいる様子の椎名を見やると、「え」とわざとらしく呟くのだ。 「もしかして~、咲良ちゃんからなにも聞いてないの?」 「仲良しなのにかわいそ~」と、類は馬鹿にしたようにクスッと笑った。  椎名は「·····さっきからなんの事だよ」と、先程から遠回しに小馬鹿にしてくる類にイラついている様子だった。  そんな類にお願いだから言わないで欲しい、と目頭が熱くなりながらも小声で訴えると、そんな俺を正面から捉える類は、それはそれは楽しそうににやっと口角を上げるのだ。

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