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02
かつて、咲良は処女だからと嘘をつかれ、襲えと那智に命令された類が、生徒会で待ち伏せて咲良を襲うところから始まり、傷心した咲良を最終的に那智が慰めるという計画が、生徒会長である那智を筆頭に決行された。
ーーが、それも随分と前の話。
これは、咲良が生徒会全員と寝ている、という噂を知っている二年の一部の連中を朝日が探し回り、誤解を解いている途中の話。
ーー灰田。
咲良達と同じクラス。遅刻早退は当たり前で、他校の生徒と日がな喧嘩ばかりしている。金持ちばかりなこの学校では珍しい、いわゆる不良である。
そんな彼は、後に窮地 の危機に立たされることとなる。
「ーーどうやっても開かないな。これじゃあ出られるまで待つしかないか」
ーー体育館倉庫。
体育で使っていたボールをクラスの全員で片付けていた時、倉庫の中に咲良と灰田がいたにも関わらず、それに気付かなかった生徒が扉と鍵を閉めてしまったのだ。
灰田は開かないという段階で諦めて壁に寄りかかって座っていたが、咲良は立て付けの問題かもしれないと数分間扉と格闘していた。
だがやはり押しても引いても扉が開くことはなく、体育の後で疲れていたということもあったので、仕方なく灰田から少し離れたところに敷いてあった体育用のマットに腰掛け、壁にもたれかかった。
ーー俺は、はっきり言って咲良が嫌いだ。
確かに顔は整ってはいるが、それだけだ。意思も喧嘩も弱そうだし、見るからに細いことから腕力もないだろう。こんな奴と喧嘩などしたら手応えがなさすぎてつまらないに決まってる。
その上、朝日と付き合っている癖に生徒会全員に手を出しているビッチときた。
ーー本当、なんでこんなぽやっとした奴が人気なのか、俺には全く分からない。
「·····なあ。そこ、床固くない?」
咲良はちらっと俺に視線を向けると、「俺の隣来たら?」と自らの脇をぽんぽんと叩いた。
誰が行くか。お前の隣なんて。
「別にいい。放っておけよ」
ふいっと顔を逸らすと、咲良は少し困っている様子だった。
ーーどうしよう。拒否されてしまった。
素行が良くないと有名な灰田はいわゆる一匹狼というやつで、誰かとつるんでいるのを見たことがない。
そして喧嘩をしているのを目撃したこともあるくらい、不良で有名だ。
俺ももちろん今まで話したことなどないし、接点もない。だがこんな状況だ、互いに助け合わなければならないだろう。灰田は地べたに直接座っていて、今は大丈夫でもそのうち辛くなってくると思う。
どうしようと倉庫を見渡すと、灰田の背後にマットが積み重なっていたのだ。俺の隣に座りたくないのなら、せめて別のマットにでも座ってくれないだろうか。
立ち上がって灰田の後ろに回ると、背伸びをして高く積み上げられているマットのてっぺんに手を伸ばした。俺の身長の問題もあるが、なぜこんな高さまで積み上げられているのか。
足をぷるぷるさせながらもマットに必死に手を伸ばしていると、背後から声を投げかけられた。
「·····おい、何やってんだ、お前」
「ーーっわッ·········!」
灰田はいつの間にか俺の真後ろに立っていて、驚いた俺はぐらっと体のバランスを崩してしまった。ドンっと背後にいる灰田にぶつかると、咄嗟のことで俺を支えきれなかった灰田と共にマットの上に倒れてしまった。
「いてて··········」
ーー倒れたのに、痛くない。
すると、後ろから不機嫌そうに名を呼ばれるのだ。
「·····咲良、」
「いつまで座ってんだ、お前」と言われ今の自分の状況を見ると、俺は灰田の股の上に座ってしまっていたのだ。
顔が熱くなりながらも、俺はパニックになってしまった。
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