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第2話 起きたら横にイケメンが裸で寝てるんですけど!

「頭……痛っ……」  枕から頭を起こした旭はあまりの痛さににおでこに手をやり塞ぎ込んだ。  絶え間なく襲ってくる鈍痛に顔をしかめる。  こんなになるなら無茶な飲み方するんじゃなかったと、少し後悔した。  敦がベッドに運んでくれたのだろうか。また、迷惑をかけてしまったと旭は悔やむ。  こうやって二人で食事をするのも今日で最後なのだから、いい思い出といえばそうなのだけれどーー。 「えっ……!?」  ふと、下を向くと自分の上半身が裸である事に気づく。慌てて布団を捲るとトランクス一枚しか履いていない。  いったいなにがあって今ベットでこんな格好をしているのか。  まさかと思い、横を見ると敦が裸で寝ていた。  布団から少し出ている健康な肌色の鍛えられているたくましい肩。色素の薄い茶色の髪の毛と長いまつ毛がカーテンから差し込む朝日に照らされていて綺麗だ。  本当に寝ているのかと疑うほどに綺麗で整った顔をして寝ているので、こんな状況だというのに見惚れてしまう。 「ま、まさか俺、敦の事襲った!?」  この状況はそうとしか考えられない。  敦の事を襲ったのなら、ちゃんと責任を取らないと。  敦が気が済むまで謝らないといけないし、敦が俺の顔をもう見たくないというのならそうしよう。  旭は覚悟を決めて敦の目が覚めるのを待った。  しばらくして、敦の瞼が薄らと開く。  いつもと変わらない、茶色く透き通った瞳が旭を見つめた。 「おはよう、旭」 「お、おはよう」  いざ、話すとなかなか本題に切り出せず目をキョロキョロとさせるしか出来ない。  上半身を起き上がらせた敦は背伸びをしてから、昨日の事を思い出し笑った。 「昨日、大変だったんだぞ。旭ってあんな酔い方するんだな」 「大変だったって何がだ!?」  余裕のない旭は大声を出して敦に詰め寄った。敦は驚いて目を丸くした後、昨日の事を思い出すように目線を上に向けた。 「そりゃ、まぁ、色々」  誤魔化そうと顔を逸らす敦を旭は逃さなかった。 「俺、酔って敦の事襲ったんだろ。じゃなきゃこんな格好して寝てないし。お前はいい奴だから隠そうとしてくれてるのかもしれないけど俺は何があったのか知りたい。もし敦に何かしてしまったのなら気が済むまで謝る。この通りだ」  旭は呻くような声を出し、その場で正座をしてそのまま土下座をした。慌てた敦はそれを辞めさせようと旭の肩に触って上体を起こさせようとする。 「違うんだ、旭。本当に何もなかったから」 「二人してパンツ一枚で寝てて何もなかったはずないだろ。敦のアナルを傷物にした責任はちゃんと償うから」 「だから、何もなかったって言ってるだろ。裸なのはスーツが皺になるといけないから脱がしたら旭がそのまま寝ちゃったからだし」 「じゃあなんで敦まで裸なんだ?」 「暑かったから……」  旭は安心して全身の力が抜けた。同時に何故か目から涙が流れ出る。 「よかった。俺、敦のこと……」  泣きながら手で目を擦っている旭に敦は近くにあったハンドタオルを渡した。 「あのな。力なら旭より俺の方があるし、もし、襲われるにしても俺は挿れる方だろ」 敦は泣いている旭の頭を呆れながら優しく撫でる。 「うっうっ、良かった」  何もなかった事に安心して涙を拭くのに夢中になっていた旭は、敦が何を言ったのかあまり聞かずに返事をした。 「それより、あんなに飲んで二日酔い大丈夫か?お腹空いてるなら旭の好きな卵かゆ作るけど」  敦は旭の頭を撫でていた手で頬を撫でながら顔を覗き込んだ。  くすぐったくなった旭は目を細める。 「わるいな。お粥作ってもらえるか?二日酔いは少し頭痛いけど薬飲めば大丈夫だから」  諦めようと思ったのに敦の優しさに心が揺らいでしまう。 「分かった。じゃあとりあえず着替えるか。いくら夏場でもパンツ一枚のままじゃあれだし」  言われて旭は自分がパンツしか履いていない事を思い出し、少し恥ずかしくなってタオルケットで肌を隠した。 「そうだな」  とりあえず、今日一日だけ敦と一緒に過ごしてから考えようと旭は頬の温もりに浸った。

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