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第2話 ジン
リビングの光が漏れる薄暗い寝室。
丁寧に拭き上げられたユーシーはジンに手を引かれてベッドに上がる。
ジンのベッドはいつも綺麗に整えられていて、純白のシーツが皺なく掛かっていた。
「ほら、足開け」
寝そべったユーシーはジンに促されるまま脚を広げた。頭を擡げ震える性器と、物欲しげにひくついてローションを滲ませる後孔がジンの目の前に晒される。
初めは死ぬほど恥ずかしかったが、その先にある快感を知ってからは羞恥心は徐々に薄れていった。
ジンは決して無理矢理しなかったし、なんだかんだ言っても優しく、テクニックもあった。
ジンに対して文句を言うことがあるとするなら、行為が総じて淡白だということ。
恋人ではないからそんなものなのだろうが、事務的な色が濃いのは否めない。本人が言うには性欲は薄い方らしいのでそのせいもあるのだろう。
ジンにとっては、性欲処理としてユーシーに付き合っているという認識だからかもしれない。
そんな文句も、行為が始まってしまえばどうでもよくなる。
ジンは丁寧にユーシーの身体を拓いていく。そんなところもユーシーは好きだった。
骨張った長い指がひくつく窄まりに埋められ、そのまま粘膜を探り中を押し広げていく。
中に注がれたローションが粘着質な音を立てる。
ゆっくりと出し入れしてローションを馴染ませたところで指を抜き、ようやくジンは服を脱ぎ始めた。
スーツの下には、細身だが引き締まった身体が隠されていた。
白い肌に、筋肉の凹凸がつくる影が落ちている。ユーシーはその背に異国の軍神が描かれているのを知っていた。
ジャケットとシャツが床に落ちる乾いた音がして、ユーシーは口に溜まった唾液を飲み込んだ。
ジンがベルトのバックルを外し、前を寛げる。ユーシーは目が離せないでいた。
心臓の鼓動が、身体の中で反響している。
ジンのスラックスと下着が床に落ち、しなやかな筋肉を纏った下肢が曝される。
下生えの下、緩く勃ち上がったジンの性器は、太さはそこそこだが長さがあった。
腹の最奥を突かれる快感は、ジンで覚えた。
結腸の襞をこじ開け、奥の肉壁を突き上げられる濃厚な快感は、何度もユーシーの意識を飛ばした。
ジンが居なければ、ユーシーはこんなにセックスにはまっていなかったかもしれない。それくらいジンと身体を繋げる行為はユーシーを虜にしていた。
「ジン、はやく、ゴム、なくていいから」
ご褒美を目の前にして、焦燥感が心臓の裏をちりちりと灼く。逸るユーシーは蕩け切った顔でジンを見上げた。
「お前なぁ」
呆れた声を上げたジンだったが、それに応えるように自身をゆっくりと擦りながら、その先端でユーシーのひくつく窄まりを撫でる。
はっきりと芯を持った熱いそれが触れると、ユーシーははしたなく後孔をひくつかせた。
ジンが先端を押し付けては離すのを繰り返すうちに、鋒から蕾へと銀糸が弧を描いて消えた。
「なあ、はやく」
くるくると窄まりをなぞった後、ジンの鋒が、丸く張りのある先端で窄まりを押し拡げ、ゆっくりとユーシーの腹の中に埋まっていく。
「あ、はいっ、て、ぅ」
待ち望んだ快感に、ユーシーは声を震わせた。
歓喜に震える肉洞は時折きゅうきゅうとジンの刀身を締め上げる。
出し入れしながら、ジンはゆっくりと奥へと進んでいく。雁首の段差で前立腺を擦り、奥へと続く窄まりを小突く。
行為中のジンは口数が少なく、ユーシーの方がうるさいくらいだ。時折目が合うくらいであまり喋ろうとしないが、ユーシーはそれが心地良かった。
ジンの下で身体を折り曲げて腰を浮かされ、何度も窄まった肉襞をノックされる。丸く張った先端に優しく叩かれ、ねっとりと捏ねられる。
堪らず腹に力を入れると、甘く吸い付く肉襞をジンの鋒がこじ開け、鋒が最奥に到達する。
奥の肉壁を突かれると、神経を焼き切るような快感とともにユーシーは絶頂へと押し上げられた。
視界に白い火花が散る。
ユーシーは喉を反らして、腹の奥から湧く快感に酔いしれた。これで気を失ったことは何度もあった。
喉が引き攣って碌に声も上げられない状態で、奥を責められるのが好きだった。
ジンの突き上げに合わせて揺れるユーシーの肉茎からはとろとろと白濁が溢れ、胸や腹に散る。
ユーシーの最奥が甘えるようにジンの鋒にしゃぶりつく。
涙で濡れた目で見上げると、吸い付く最奥に堪えるように眉を寄せたジンが見えた。
目が合うと、ジンは少しだけ表情を和らげた。
「気が済んだか?」
「ジン、まだ、いってねーだろ。出してよ」
ユーシーは腹の中に熱い精液を吐き出されるのが好きだった。脈打つ楔から放たれた熱い迸りが熟れた肉壁を打つのを感じると、言いようのない多幸感があった。
どうせ孕む心配のない身体だし、後片付けをすればしんどい思いをしなくて済むことを知ってからは、チャンスさえ有れば中で出させていた。
病気を貰うからとジンに咎められるので知らない相手の時は流石に控えるが、素性の知れたジン相手にはそんな気遣いも要らない。
「お前が自分で片付けすんなら出してやる」
「っ、する、するから、出して」
「っとに、世話の焼ける……」
舌打ちをひとつして、ジンの動きがユーシーを責める動きから射精のための動きに変わる。ジンの自分本位な動きにさえも、ユーシーの身体は快感を拾い上げた。
奥の襞を何度も段差で嬲られ、視界がちかちかと明滅する。その合間に眉を寄せて涼しげな目を快感に澱ませたジンが見えて、ユーシーは背を震わせた。
「っあ、ジン」
何度目かの絶頂に、ユーシーの中がきつく締まる。
ジンが息を詰め、最奥まで埋まった刀身が脈打ち、熱い迸りが最奥の肉壁を打つ。
腹の奥に溢れる熱い白濁を感じ、ユーシーの表情が甘く蕩ける。
力強く脈打ち、その度に熱を吐き出すジンを、ユーシーの内壁は戦慄ききつく締め上げる。
「あんま、締めんな、バカ」
低く唸るようなジンの悪態も、絶頂の余韻に揺られているユーシーには届いていないようだった。
二人分の荒い呼吸が部屋に響く。
中の収縮も落ち着き放心しているユーシーの中から、吐精を終えたジンが引き抜かれる。
「ンぅ」
排泄に似た快感に、ユーシーは腰を震わせる。中を埋めていた質量がなくなり、後孔は物欲しげに口を開けてひくついた。
「満足したか?」
ジンが身体を引き、芯の無くなった性器を拭きながら、ユーシーを見遣った。
「へへ」
未だ行為の熱の残る身体をシーツの上に横たえ、ユーシーは満足げに蕩けた笑みを返す。
ジンはユーシーの髪をくしゃくしゃと撫でるとベッドを降りた。
「ジン、どこ行くんだよ」
「仕事だよ。すぐ戻るからいい子にしてろよ」
ジンは手早く身なりを整えると、部屋を出て行ってしまった。
鍵の閉まる音がする。どうやら本当に仕事のようだ。
「なんだよ……」
甘ったるいピロートークを望んでいた訳ではないが、終わるなり仕事に戻ってしまったジンに裏切られたような気分だった。
まだ熱の残るベッドに一人残されたユーシーは、倦怠感が残る身体でシーツに残るジンの温もりを探った。波打ったシーツに顔を埋めると、微かにジンの匂いがする。綺麗好きなジンらしい、石鹸の匂いだった。
そうやってぼんやりとシーツを弄ってジンの温もりと匂いを堪能していたユーシーだったが、熱が落ち着き心地よい倦怠感がやってきたところで徐に後孔に手を伸ばした。
ジンが抜けた蕾からは、既にローションとも精液ともつかないものが溢れてきている。
ユーシーはそこへ、二本の指を捩じ込む。先程までジンを受け入れていたそこはユーシーの指を容易く飲み込んだ。
「ん、はぁ」
窄まりを拡げると、ローションの混ざった精液がとろとろと溢れ出し、肌を伝い落ちる。腹の中の熱さが移ったとろみのある液体が這うだけで、肌は快感を拾った。
「う、あ、ジン」
まだ中に残る白濁を掻き出そうと指を動かす。
腹の中に残る残滓は熱く、内壁を指先が掻く度にぞくぞくと背筋を甘い痺れが這う。
「あつ……」
掻き出されたローション混じりの精液がとろりと肌を伝い、その感覚だけで肌が粟立つ。温もりの薄れゆく体液は滑らかな肌を伝い落ちると、シーツに染みをつくった。
埋めるものも残滓もなくなった後孔は時折収縮し、快感を求めて指を食い締める。
一回では満足出来ない貪欲な身体に誘われ、ユーシーは腹側のしこりを押し込む。
「ッア、んく」
身体が跳ねる。
腰を揺らしながら、腹の中で生まれる快感を貪る。
しこりを押し込み、引っ掻き、緩く頭をもたげた性器を扱く。
だらしなく開いた口からは、熱く熟れた吐息が漏れた。
意識は既に、快感を貪ることに集中していた。
「ユーシー」
「んあ」
不意に名前を呼ばれて、ユーシーは呆けた声を上げた。
手が止まる。顔を上げると、部屋の入り口にジンの姿があった。
「ったく、風呂でやれ」
いつ戻ってきたのか、ジンはベッドに腰掛けてユーシーの額を弾く。
「仕事じゃねーの?」
「もう終わった」
ジンは悪びれる様子もなく笑う。心なしか優しい顔をしていて、心臓が甘く震えた。
「……早ぇよ」
バツが悪くて、ユーシーはジンを睨んで悪態をつく。まさか後処理からの自慰を見られるとは思っていなかった。余りの気まずさと恥ずかしさでユーシーは目を逸らす。
「かわいいシャオユーを心配して早く戻ってきてやったんだよ。不満か?」
ジンが笑う。してやった、という顔だった。
「不満じゃねーけど」
明らかに揶揄っているジンの声色に、ユーシーは思わず拗ねた声を上げた。
口では、ジンに勝てない。
ほったらかされたことは頭に来ていたが、早々に戻ってきてくれたのは嬉しかった。
「ほら来い、どろどろじゃねーか」
ジンに抱き起こされると、そのまま抱き上げられ、バスルームに連れて行かれた。
結局バスルームでジンに後処理をしてもらい、一緒にベッドで眠った。
こんな関係ではあるが、ユーシーにとってジンは兄のような存在だった。
勿論血のつながりは無い。それでも、兄弟のような、親子のような、不思議な絆があった。
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