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晴明編・3

 ——あれ? ちょっと待て。この展開てもしかして?  良からぬ予感がして、朝陽は晴明を見つめる。 「晴明が俺の四人目の番……とかないよな。まさかな」  ハハハ、と乾いた笑いがこぼれ落ちた。 「ああ。良く分かったね」  座卓の上に思いっきり額を打ちつけると、ゴンッと大きな音が響いた。 「凄い音がしたけど大丈夫かい?」  大丈夫という意味合いを込めて、朝陽は手をヒラリと振る。 「オレは嫌かな? まあ、オレもまさかあの人と同じ立ち位置になるとは思ってもみなかったけどね」 「あの人?」 「平ノ将門公の事だよ。オレの実父なんだ」 「へっ、嘘⁉︎」  肩をすくめられる。 「母は、真っ白な妖狐だったと幼い頃に聞かされた」  キュウと初めて会わせた時の将門を思い出す。  どこか複雑で、不機嫌そうな表情をしていたのはそういった理由もあったのかも知れない。  朝陽は一人納得した。 「それなら晴明は俺との番契約は辞めといた方がいいんじゃないか? 俺の番の中には九尾の狐もいるぞ。気まずくないか?」 「うーん、確かに一理あるね。けれど番候補を降りるのは嫌かな。オレは個人的に君自身に興味があるからね。番候補になれたのはとても嬉しいんだ」  真意が全く掴めない口調と表情で言われる。  よく分からなかったが、晴明がそれでいいなら言及はしない事にした。 「そうなのか。晴明って、変わってる……とか言われる?」 「ふふ、そうだね」  笑顔が本当に綺麗だった。  真顔か笑顔しかないのが惜しい。 「なあ、俺早くじいさんとこ戻りたいんだけど? 今日は用があってここに来てるから」  博嗣はどうしているのだろうか。  こうしている間に時ばかりが経って、捜索願いを出されて無ければいいが、と朝陽が思考を巡らせていると晴明が静かな口調で答えた。 「浦島太郎のようにはならないから安心して。それに、君が条件を満たせば帰れるよ」  また嫌な予感がした。  いや、むしろ嫌な予感しかしない。 「ここにこうして閉じ込められてるって事は、番にならなければ元の世界に戻れないパターンだったりして……?」  なーんてね、と言う前にグニャリと景色が歪んで、強制的に部屋を移動させられた。 「ご名答。この展開はもう慣れたのかな?」  布団の上に転がされマウントを取られる。 「は? いや……出来れば外れてて欲しかったかな、俺は」  己で言っておきながら、驚くのと同時に悲しくなってきた。 「こんな極上のご褒美は六百年ぶりでね。誰にも邪魔をされない空間が欲しかったから作ったんだ。こう見えてもとても心が昂っていてね。是非、堪能させて貰えると嬉しい」  甘やかに囁かれて、首筋に吸い付かれる。 「いや……だからあの、俺急いでるんだよ。番契約するんなら帰ってからゆっくりして欲しいんだけど」 「経過する時間は気にしなくていい。秒単位のズレは出るけれど、ちゃんと元の場所の時間軸に戻れるように設定してあるから」  朝陽側の意見を聞く耳はないらしい。  首筋を甘噛みされて、強制的にヒートにさせられてしまえばなす術もなかった。  強引なところは将門譲りだな、と他人事のように朝陽は考える。 「ふ……ッ、あ」  全身の力が弛緩していく。  何故か晴明の霊力に酔いそうだった。  力の質が朝陽と相性がいいのかもしれない。  体が溶けて混ざり合うような感覚は初めてで、朝陽は落ち着かない気分にさせられる。  首筋に口付けられると、そこから体に電流が流れたような痺れが走った。 「晴明……っ、何か……体が変、だ。何……した?」  態と性感帯を外され愛撫されていると、焦らされまくったように体が熱を持って欲を孕んでくる。  服は全て脱がされて、素肌に口付けられていた。 「オレが微弱な霊力を流してるからね。そのせいだろう。後、霊力と体の相性がいいからだと思うな。気持ち良いかい?」  脇腹から腹筋に指を滑らせられる。  微弱な霊力が静電気のようにピリピリと肌を刺激して、朝陽は堪らず身を捩った。  痛みはない。  困ったことに、驚くほどに気持ちが良くて、思考まで痺れてくるようだった。

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