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第3話

「♪〜〜♪〜〜〜」 「....................」 「♪〜〜♪〜〜〜」 「....................」 「♪〜〜♪〜「チッ、」」 疲れに疲れきった俺の身体の回復を、妨害してくる電話の音。 掛けてきてるのは、やっぱりあいつだった。 俺の安眠を妨害した覚悟は出来てるんだろうな。 * 「........おい。皐月。」 目の前には、遅えと文句を垂れる男が座っている。 ただでさえ俺は、人の多いところや煩いところが嫌いなのにファミレスを指定したり、なにより、安眠を妨害されたことにイラつき、その場に立ち尽くす。 「おい。早く座れよ。」 この世界は自分を中心に回っている。とでも言いたげな面をしやがるこいつは、俺の担当の水瀬皐月。 どこまでもムカつくやつだ。 何も言わず、手を差し出すこいつに、俺は怒りを抑えながら原稿の入った封筒を差し出す。 「今回もギリギリだったな」 皐月は、性格の悪そうな笑みを浮かべ、こちらも見る。 「最近までなんも浮かばねえって、泣きべそかいてたから、今回こそ間に合わないかと思ってた」 「泣きべそなんてかいてねぇよ。」 担当としてあるまじき言葉を、あたかも普通のように発する性悪男に、反発ながらも隣に越してきた少年の話をする。 「へぇ。男子大学生ねぇ。.........で、顔は?」 「...............お前...誰彼狙うのやめろよ...」 お前が言うなよ。と呟きながら眉を顰めるこいつはゲイだ。 高校からの付き合いなので、当然知っているし、なんなら当時付き合っていた彼氏を紹介されたこともあった。 どうで良かったので聞き流していたけど。 「で?どうなの?」 「何が?」 「顔だよ。顔。」 イライラが蓄積された身体を、どうにか抑えながら、俺はお隣さんの話をする。って言っても顔だけだが。 「.........まぁ、モテそうな顔はしてた....気がする」 「気がするってお前...。そろそろ、自分以外の人間興味ありませんっての治したら?」 「.............めんどい」 そう。 俺は、こいつが言う通り他人にとことん興味が無い。 でも、ひとつつけ加えるとしたら、自分にも興味が無い。 * ある日の、昼下がり。 日傘をさすお姉さん、半袖をさらに捲りあげてる少年達、噴水でずぶ濡れになりながら遊ぶ子供達。 今日は、今夏の最高気温らしい。 そんな、クソ暑い日に俺は、なぜか外にいる。 普段滅多に、外に出ないのに、わざわざあっつい中外にいる俺の機嫌は徐々に悪くなる。

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