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第5話
その変な渾名に、自然とピクピクと口角が上がる。
あぁ、帰りたい。
「ははは、百合斗くん、、。奇遇だね。」
目の前には、欲しかったプレゼントをやっとゲット出来たかのように目を輝かせる隣人。
「漱石さんなんでいるんですか!!?」
嬉しそうに、問いかけてくる彼に苦笑いを浮かべながら答える。
「ちょっとね、。それより、百合斗くんはなんでここに?」
自分が来た目的を一瞬忘れていたかのように彼は、あっ!と本来の目的に目を向ける。
視線を辿ると、そこには潰れてしまった男子大学生。
彼の目的はこの子らしい。
ぶつぶつ文句を言いながらも、その子を迎えに来た彼はとても優しい子だと思う。
良いタイミングだと思い、彼らを送るという理由をつけ、俺もその場を離れた。
引き止める女の子達の声を、背中に受けながらも俺は迷わず入口に向かう。
「百合斗くん。その子は??」
「俺の幼馴染!幼稚園が一緒で小学校は別だったんだけど、また高校で再開して大学も一緒なんです!」
そう笑顔で答える彼を前にし、イラつきも少し和らぐ。
どうにか、タクシーを捕まえ、彼の幼馴染を家まで送り届け、俺たちが住むアパートへ向かう。
久しぶりに酒を飲んだせいか、眠気が襲ってきて、タクシーの中で意識を飛ばしてしまいそうになったその時、タクシーの運転手が話しかけてきた。
「お客さん。悪いんだけど渋滞にはまっちまってね。このまま、進んでもいいんだけど、ここからだと歩いた方が早く着くかもねぇ。どうするんだい?」
早く家に帰って寝たかった俺は、百合斗くんの了承を得て、歩いて帰ることにした。
10分もかからないなと思いながら、少し談笑しながらも歩き、そろそろという所で、百合斗くんの足が止まる。
「.....?百合斗くん、どうしたの??」
そう問いかけるが、返事はない。
少し俯き、胸を抑える彼が心配になり、駆け寄る。
「百合斗くん??大丈夫??」
百合斗くんは、とても苦しそうに、しかし、心配をかけないやうに笑顔を浮かべて返事をする。
「....はっ..。うん...。大丈夫...!.......久しぶりに歩いたから.....疲れちゃったのかも...!」
苦しそうに言葉を絞り出し歩き出す彼に、何も出来ないまま俺たちは家へ向かう。
自分だけの空間に、少し安堵する。
「はぁ。飲み会なんて行くもんじゃねえなぁ...。」
そう思いながらも、頭の中にはさっきの苦しそうな百合斗くんの姿。
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