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第7話
「百合斗くん、またね」
そう言い残して、俺は部屋を出た。
自室に帰ってからも、俺の頭の中は百合斗くんのことばかり。
もしかしたら、本当に重い病気なんじゃないか...なんかできることは無いか。
いや、でも、出会って数日の人に心配されても迷惑だろうし...
ゴールのない考えが俺の頭を巡って悩ませる。
「はぁ............疲れた。」
柄でもないことで頭を使いすぎたらしい。
何でこんなに百合斗くんの事が気になるのか。
惹かれるのか。
今まで、流されるがままに生きてきた俺は、この思いの意味をまだ知らなかった。
*
..............................チッ。
朝から舌打ちをして、俺の一日が始まる。
その原因は、まぁ、あいつだろうな。
朝から鳴り響く携帯を見ると、そこには皐月からの着信。
「........内容次第では、お前の明日は来ないと思え。」
「朝からご機嫌ななめだね。ききょーちゃん」
「.................」
「まぁ、そんな怒んなって。今日暇?ちょっと付き合って欲しいんだけど。」
「忙しい。」
「ん。りょーかい。13時に駅前集合で。ツーツーツー.......」
はぁ。縁切ってやろうか。
そんなことを思いながら、身体を起こす。
仕事やらなんやらしてたら、もう12時。
渋々、出かける準備をする。
あー。
なんて優しい男なんだ俺は...。
「おせーよ。早く行こうぜ。」
「.....はぁ。なんで俺お前と友達になっちゃったんだろ。」
「生まれた時から一緒だからしょうがないよ。」
「.........で?今日なんで呼んだわけ?」
「あーね。ちょっと選んで欲しいんだわ。」
そう言って、連れてこられたのは、地元でも1番を争うほどの大きなショッピングモール。
わざわざ、仕事も立て込んでいない、休みの日に俺は、幼馴染の彼氏の誕プレ選びに付き合わされるらしい。
「これどっちがいいと思う。」
同じような柄、色のネクタイを両手に持ち問いかけてくる皐月。
適当に右と答え、その場を去ると、後ろからはブーイングの声が聞こえてくる。
右から左へと流れていくその声を後にして、俺は店を見て回る。
確かに、久しくショッピングモールなんて行ってないので少し気分も上がる。
鉛筆のストックが少なくなっていることを思い出し、文房具屋に向かう。
人に揉まれながら歩みを進めると、少し前を歩く後ろ姿が目につく。
百合斗くん?
少し奇抜めな上着。
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