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第14話

連絡通り、12時ピッタリに家のチャイムが鳴る。 はぁ、と軽く溜息をつき、財布と携帯だけ持ってドアを開ける。 「で、どこ行くわけ?」 何も分からず、タクシーに乗せられる。 「brilliant」 brilliantとは、俺達がまだ20代前半の遊び回っていた頃に、お世話になっていたバーだ。但し、ゲイバーだが。 「あー。でもあそこ夜だけじゃん。」 「昼も始めたんだって。ランチ。」 「へー。結構久しぶりじゃん?」 「まぁ、お前はな。俺は週一くらいで顔出してる。」 20分ほどタクシーに揺られ、目的地のbrilliantに着く。 扉を開けると、お洒落なジャズが流れ、中には男、男、男。 一斉に客の視線が俺達に向けられる。 しかし、この状況に慣れっこの俺達は、周りの目を気にせず、まっすぐカウンターまで進む。 「んー?まー!!!桔梗ちゃんじゃないの!!」 「ママ。大分ご無沙汰。」 「ほんとよぉ。全然顔見せてくれないんだから!皐月ちゃんのこと見習ってよねぇ!」 皐月は、ママに軽く挨拶をし、既に手にはカクテルを持っている。 「............なに?」 じっくりと俺の顔を見る、ママの視線に気付き、気まずさからそう尋ねる。 「桔梗ちゃん。更にいい男になったわね。今フリーなの?」 「んー。まぁね。」 「あらぁ。誰かお持ち帰りしちゃう??♡」 「俺、そういうのもう辞めたんだね~。」 「えー!勿体無い!うちでもあんた達2人は伝説なのよ~??」 「冷酷無常な最強にゃんこの皐月ちゃんと一度抱かれたらもう誰とも出来ないと名高い最強タチの桔梗ちゃん♡」 「うわ。そんなダサいこと言われてんの?」 横から話に割って入ってきた、皐月が嫌そうな顔をしながら、ナッツをつまむ。 「はぁ。皐月ちゃんも彼氏一筋だし、桔梗ちゃんも枯れ果てたそうだし...。」 「いや、枯れては無いから!!」 態とらしく頬に手を当て、項垂れるママにツッコミを入れる。 「なぁにぃ?好きな子でも出来たわけぇ?」 「いやー?別にそういう訳でもないけど、もう28だし。」 「桔梗。耳赤いよ。」 咄嗟に耳を隠し、皐月の方を見る。 すると、ニタニタしながら皐月がママとアイコンタクトを取っている。 「お前、まじで。」 「「桔梗ちゃんのえっち~♡」」 2人揃って声をハモらせて言う。 絶対もう来てやんない。 日も落ちてきて、客も増えてきたので俺達は、店を出た。 「あ、皐月。見て欲しいやつあるからちょっと寄ってって。」

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