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第21話

「じゃあ、ちょっと上がってもらってもいい?」 「玄関で立ち話もなんだし。」 「え!はい!お邪魔します!」 「適当に座ってて。」 俺、いつも通りにできてるかな。 顔ニヤケてないよね。 あー。ヤバいかも。 キッチンからリビングを覗くと、ソファの上に借りてきたねこのようにちょこんと座る百合斗くん。 かわいー。しんど。 本棚から数冊、自分の本を取り、彼の元に行く。 「ん。お待たせ。」 「どれ読む?」 数秒悩んだあと、彼は1冊の小説を指さす。 「おー。これね。」 「どんな話ですか?」 「んー。純愛?」 以前読んだ小説の事で、散々揶揄ったせいか、何処が安堵の表情を浮かべる百合斗くん。 「まぁ、男同士のだけどね。」 そう付け加えると、彼は、安堵の表情から一気に驚きと恥ずかしさの混ざった顔をする。 「違うのにする〜?」 揶揄いがいしかないな。 顔を赤くしながら、百合斗くんは口を開く。 「いや!それで大丈夫です!」 本を渡すと、早足で玄関へ向かう。 後ろ姿から、首の後ろと耳が赤くなっているのが分かる。 隣の部屋なのに、帰ってしまうのが少し寂しく、つい声をかける。 「またね」 そう言い、軽いキスをする。 彼は驚きながらも、顔を真っ赤に染める。 「お邪魔しました!」 大きな声でそう言い、勢いよく外へ出ていく彼の後ろ姿を見つめ、またくくっと笑う。 * 「んじゃ、そういう事だから。」 そう言いながら、詳細が書かれている、紙を数枚渡してくる。 「はー。本当にやるの?」 「間違いだったとかないよね?」 「桔梗先生。ファンがお待ちですよ。」 態とらしい笑みを浮かべながら、そう言う皐月に何処からか怒りが湧き上がってくる。 怒りを鎮めながら、また俺は項垂れる。 場所は、町外れの喫茶店。 穴場なのか、あまり人がいなく落ち着いた雰囲気の店だ。 俺達は、基本家かここで、仕事の話をしている。 今日の話し合いは、言わずもがなサイン会の話だ。 「今日が10月14日だから〜。お、丁度半年後じゃん。」 「4月の14日....正確な日付出されるとさらに嫌だ...。」 「安心しろ。警備は万端だ。」 「問題は、その時じゃないんだよ...その後だよ...。」 「皐月、お前もあの時痛感したろ?お前の携帯にも掛かってきてなかったっけ?電話。」 「あー。あの女ね。どうやって、俺の番号ゲットしたんだか。」 「まー、レアだレア。あんなん中々いないから。」 変わらず項垂れていると、よしと言って突然皐月に手を引かれる。 「癒してもらおう。」

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