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第24話
百合斗くん、引っ越してきたばっかだしなぁ。
疲れでも溜まってたのかな。
百合斗くんの冷蔵庫を開けると、中には素晴らしいほどものが無い。
1度部屋に戻り、食材をもち再びお粥作りを始める。
百合斗くん、もしや、カップラーメン生活でもしてんのか...?
ちゃちゃっとお粥を作り終え、味見をしながら百合斗くんの様子を見に居間に戻ると、タイミング良く彼も目を覚ます。
「ん.......。」
今の状況に理解出来ていないのか、呆けた顔でこちらを見る。
「あ、百合斗くん。もう大丈夫そ?」
「え、え、漱石さん、??」
「漱石さんじゃなくて、桔梗さんだけどね。」
「顔見た感じ、だいぶ調子戻った感じかな?」
「え、いや、あのなんでここに??」
まぁ、そうなるよね。
「ご飯おすそ分けしようとしたら、中からすごい音聞こえたから見てみたら、百合斗くん倒れてたんだよね。めっちゃビビったよ。」
恥ずかしさと情けなさのまじったような顔をしてボソッと彼はお礼を言う。
「あの、本当にありがとうございます。」
「ふふっ。大丈夫だよ。」
百合斗くんの額に手を当てると、前より大分熱も冷めているがまだ熱い。
「うーん、まだちょっと熱っぽいね。」
「お粥食べれる??」
「あ、はい。いただきます。」
百合斗くんにお粥の入った器を渡そうとしたが、手を引っこめる。
「百合斗くん。やっぱ、病人は病人らしくね。」
そう言い、ベッドに百合斗くんを座らせ、お粥を乗せたレンゲを彼の口に運ぶ。
いつもとは違い、熱のせいか今日はやけに素直な百合斗くんは、パカッと無防備に口を開ける。
子供に餌あげてる親鳥の気持ちだ。
「可愛いねぇ。」
無防備な姿につい笑みが漏れてしまう。
うん。食欲はあるようで良かった。
お粥を完食し百合斗くんに布団をかけ、携帯を枕元に置く。
「枕元にスマホ置いとくから、なんかあったらすぐ連絡するんだよ。」
頭を軽く撫で、音を立てないように静かに部屋へ帰る。
*
目を覚まし、時計を見ると11時を指している。
百合斗くんのことが心配で、中々眠れず、やっと寝付いたのが3時の事だった。
何をしていても、彼のことが頭に浮かび、そろそろ末期だと思う。
あと、そろそろ我慢の限界。
今日は、昼過ぎから皐月と上司達との打ち合わせがある。
皐月だけだったら、手軽な甚平に適当に上着を羽織っていくのだが、今日は少しちゃんとした方が言いっぽい。
クローゼットを開けると、数着掛けられている着物を適当に選び、着る。
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