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第28話
「...文月小都さんですよ。
なんで、そんなこと知りたいんですか...。」
「んー?今までのファンレターにあるかなーって思って。」
絶対嫉妬してるじゃん...。可愛い...。えぇ。どうしよ。
納得したようなしてないような表情をし、黙々とオムライスを口に運び続ける。
「ご馳走様でした。んじゃ、」
「あっ。」
立ち上がる、百合斗くんの腕を掴む。
「この前、百合斗くんが見たがってた映画のDVDゲットしたから見ない?」
「............見ます。」
百面相しながら、渋々答える。
「そういえば、この作品も原作は小説なんだよ。沢山本読む子なら知ってるかも。」
そう言うとまた百合斗くんはむっと不満そうな顔をする。
「...俺だって本読むし。」
「ん?なんか言った?」
「!いや、別になんでも!」
「ふーん。残念。嫉妬してくれてるのかと思ったのに。」
そう言って、隣に座る百合斗くんの顔を覗き込む。
「んなっ!!」
こっちを見ながら顔を赤くし、怒っているような恥ずかしがっているような表情をする。
「嫉妬なんてしてません...。」
ふいっとそっぽを向いてしまう、彼の頬をムニっと掴み、こちらを向かせる。
「ほんとかなぁ?」
逃げ場をなくした、百合斗くんの口にチュッと軽いキスをする。
更に赤くなった惚けた顔をしている彼の首や頬、口に触れるか触れないかのところに沢山の口付けをする。
「そ、漱石さん。」
「んー?」
「なんで、そんな際どいとこばっか...。」
「...百合斗くんからしてくれたらお兄さんもっと頑張っちゃうけどなぁ?」
そう言うと、勢いよく手で顔を覆い隠す。
テレビの電源を消し、部屋には、時計の針の音だけが響く。
「百合斗くん?してくれないの?」
ゆっくりと覆い隠していた手を俺の顔にのばす。
ちゅっと触れるか触れないかのキスをし、勘弁してとまた顔を隠してしまう。
「ははっ。いい子。」
彼の顔を隠している手をどけ、口付けを交わす。
さっきよりも長く深く。
「百合斗くん。口開けて?」
少し躊躇いながらも小さく口を開ける彼。
容赦なく、舌を入れ込み、彼の綺麗な歯をなぞる。
「ンッ...チュッ....」
上顎をなぞると、百合斗くんは苦しそうに俺の背中に回していた手でトントンと叩く。
口を離すと、ケホケホと咳をし、涙目になりながらこちらを見てくる。
「ははっ。ごめんごめん。大丈夫?」
「...なんでそんな余裕そうなの。むかつく...。」
何に不貞腐れているのか分からないが、ムッと頬を膨らましている、彼が可愛くてつい吹き出してしまう。
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