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第33話

折角、百合斗くんから初めて電話が来たにも関わらず、紬のせいで台無しになってしまった。 「今の彼氏??」 「お前さ~。煩い。」 「ガチギレされてんの~」 ぴえん顔で泣き真似をしてくる紬の横で冷やかしを入れている皐月。 はぁ~。帰りたい。 いい時間になってきたので、ようやく解散することになった。 ばいば~い!!また遊ぼ~ね~!!とぶんぶんと手を振っている紬をガン無視し、帰途に着く。 タクシーから降り、歩きながら、電話をかける。 「もしもし?起きてる??」 「あ!はい!全然起きてます!!」 「さっきはごめんね~。騒がしくて」 「いやっ!!いきなり掛けちゃったのこっちだし気にしないでください!!」 「いやいや、いつでも掛けてくれていいからね。でさ、俺今百合斗くんの部屋の前に居るんだけど、入れてくれたりする??」 「…ん!?え!!ちょ待ってくださいね!!」 中からドタバタと走ってくる音が聞こえ、勢いよくドアが開かれる。 「漱石さん…。あ、どうぞ!!すみません、寒いのに…。」 「俺が急に来ちゃったから、謝るのはむしろ俺の方だよ。」 寒いので早く早く、と急かされるようにリビングへ通される。 2人ソファに横並びに座り、一息つくと、百合斗くんが言葉を発する。 「あの~。なんかありました??」 「あ。いや、電話の時なんか百合斗くん元気なかったからさぁ~。」 「えッ!!そんなことでわざわざ…?」 「はははっ。そんなことって、好きなら普通だよ。」 「~~~~~ッ!!」 「で、なんかあった??」 「えッ!いや!!これと言って特には…」 百合斗くんは、そう言って優しく微笑む。 この表情をする時は、何かを隠している時だ。 じーっと見つめると、段々表情が固くなっていき、焦り出す。 「……寂しかったから。」 寂しかったから? え?俺と会えなくて?何??かわいい。 「……寂しかったんだ?」 赤く染まった頬を撫でる。 「ッつめた!!!!」 「あはははっ!!ごめんごめん、大丈夫すぐ暖かくなるよ。」 そう言うと、何かを理解したのか更に顔を赤く染める。 そんな百合斗くんが可愛くて、可愛くて、今すぐ襲ってしまいそうになるけど、その気持ちを押し殺して、そっとキスをする。 百合斗くんは、顔も身体も全てが暖かい。 子供体温??なんて聞いたら、怒るだろうな。 「百合斗くん暖かいね。」 「…漱石さんが冷たいんだよ。」 「ふふ、そうだね。」 からかわれていると思ったのか少し、頬を膨らます彼が愛おしい。

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