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第5話
1週間後の入社式に合わせて、今日は引っ越し作業だ。朝から実家の荷物を運送業者に運んでもらい、新しい家へと荷物を移動していく。
全ての荷物を運び入れ、忙しい仕事を休んでまで手伝ってくれた両親に感謝を述べた。
お互い少し涙ぐみながら「またいつでも帰っておいで」と暖かい言葉をもらい、新しい家へと帰宅した。
新しい家は一人暮らし専用マンションの3階。
場所は実家から6駅。職場へは歩いていける好立地だ。
隣の部屋は空き家で、反対側は大家さん曰く同い年くらいの男性が住んでいるらしい。まだ挨拶できていないから、今度挨拶行かなくちゃ。
ほっと一息ついて、改めて新しい家を眺めてみる。段ボールしかない殺風景な部屋だ…
とりあえず由磨に連絡しよう。
由磨とはちょこちょこ連絡を取っていたが、相変わらずそっけない返事が多い。それでも、返事だけはいつもくれた。
だから、今回も引っ越しの連絡はしておこうとスマホに手を伸ばす。
「今日から一人暮らしすることにしたんだ。時間があったらまた来てほしい。」
すると珍しくすぐに既読がつき、
「一人暮らし?母さんたちは許したの?どの辺り?心配だから教えて」と返信がきた。
久しぶりに即レスの長文が返ってきて僕は嬉しくなってしまい、目をキラキラ輝かせながら返信を打った。
「母さん達も賛成してくれたよ。場所は〇〇駅の近く。」
更にすぐ返信が来て、
「わかった。明日行く。住所教えて。」
まさか、数年ぶりに由磨に会えるなんて……
今まで何度誘っても実家に帰ってきてくれなかった由磨。由磨が大学を卒業して一人暮らしを始めてから、かれこれ2年は会えていない。
急に舞い降りてきた幸運に僕は思わずガッツポーズをした。しかも明日かぁ〜。明日までに荷物片付くかな?と呑気に考えていた。
由磨に住所を送り「楽しみにしてる!」と返信を送った。
由磨の来訪が舞い込んだお陰で引っ越しの緊張が溶けたのか、急にお腹が空いてきた。
とりあえず食材が何もないので買い出しに行こうと、だらだら支度をはじめる。
徒歩3分にあるスーパーには大体の物が揃っており、とても充実した品揃えだった。今日の晩御飯と明日由磨に振る舞う手料理用に食材を買い込む。
お会計を済まして、そそくさ帰路に着く。
スキップで帰りたいぐらい浮き足立ってた僕は、その時ある人物に見つかってしまった事に全く気付かなかった…………
何も知らず、スーパーの袋を両手いっぱいに持ち、少しニヤつきながら新居へと急いだ。
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