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第13話
由磨の家は、僕の家から然程離れておらず、タクシーで20分程走ると着いた。
こんな近くに住んでいたなんて…………
2年間も離れて暮らしていたのに、由磨は思っていたよりも近くに住んでいた。
何で一度も会いにきてくれなかったんだろうか…
そんな事をぼんやり考えながら、先程の出来事を考えないよう、震える手で由磨の手を必死で握り続けていた。
由磨………由磨…………由磨…………
涙が止まらず、震えながら、ただただぼんやりと前を見つめる僕の手を握り、そっと肩を抱きしめてくれた。
「大丈夫だから、大丈夫。」
何度も何度も、そう言って僕の背中をさすってくれた。
「ゔぅっ…………由磨………由磨っ…………」
そこで初めて、声を出して泣く事ができた。
嗚咽混じりに由磨の名前を呼び続ける僕を、由磨はずっと抱きしめてくれていた。
由磨の隣にいれば、僕は安心できるんだ………
ずっとそうやって生きてきたんだ……
由磨は、僕の…………
…………………大切な人だから。
タクシーを降り、由磨に手を引かれながら部屋に入る。初めて入る部屋なのに、部屋全体から由磨の香りがして、なぜか落ち着いた。
相変わらず涙は止まらないままだけど、ようやく落ち着ける場所に来られて少し安心してきた。
「由妃、ここは安全だから。ちゃんと僕が側にいる。どこにも行かないよ。だから、少し休もう?」
そう言って由磨は僕をベッドに寝かせてくれた。
「……ぐすっ……どこにも行かないでっ……僕を………1人にしないで…………」
由磨の手を握りながらそう伝えた。
この手を離したら、また由磨がどこかへ行ってしまいそうで。
また、会えなくなりそうで………
僕は必死に由磨に縋った。
僕には由磨しか居ないんだ……………
由磨さえ居れば僕は………僕は……………
「うん、絶対にどこにも行かない。手も離さないよ。」
「………うん、………うん。絶対だよ………」
「あぁ、もちろんだ」
そう言って、久々に由磨の笑った顔を見た。
昔と変わらない、由磨の笑顔………
眩しいほど真っ直ぐで、瞳の奥の強さを感じる、由磨らしい笑顔………
あぁ、また由磨の笑顔が見られるなんて……
ようやく由磨に再開できた喜びを実感してきて、また涙が止まらない僕に、由磨は呆れるかな…………
でも、嬉しいんだ………
また、由磨に会えて。こうして、話せて。
由磨がそっと頭を撫でてくれて、懐かしさに浸っていると、だんだん意識が微睡んできた…
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