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第21話*#由磨side

** 遂に、由妃と一線を超えてしまった…… あの状況ではこうするしかなかったんだ。 今は自分にそう言い聞かせる事しかできない。 本当は凄く嬉しかったんだ。 どんな形であれ、ようやく想いが届いた。 由妃の気持ちが僕と同じだと知れた。 それだけで、今は十分だ……… まさか由妃も僕を好きでいてくれたなんて… この恋は実らず終わると思っていた。 そうなるはずだった。 大学を卒業して実家を出る時、そう決心した。 由妃の事は影で見守り続けると… あの日、両親から聞かされた話。 由妃と僕は血が繋がっていないという事…… ** 由妃の両親は、由妃が幼い頃に離婚。 きっかけは父親の由妃への性的暴力だった…… 由妃の父親は昔から小さい子どもが好きだった。母親も、それは性的な意味ではなく、単なる愛情だと思っていた。 由妃が生まれてから状況は一変した。 母親に似て、由妃は生まれた時から人並外れた美貌の持ち主だった。 両親もたいそう可愛がったそうだ。  しかし、由妃が成長するにつれ、父親の視線が厭らしくなっていった。 母親は気のせいだと見ないフリをしていたが… ある日、あの事件が起こる……… 母親はいつも通り昼にパートに行っていた。 その日は珍しく父親が有給を取っており、家にいるのは由妃と父親の2人だった。 母親は、仕事が早く終わったので、 急いで家に帰ると、 そこには… 泣き喚く息子を組み敷く父親の姿があった…… 行為に夢中だった父親は母親の帰宅にすら気付かず、ただただ息子を嬲っていた。 母親は呆気にとられて一瞬身動きを取れずにいたが、すぐさま息子を父親から引き離した。 「っ………なにしてるの!私達の大切な息子よ?どうしてこんな……どうしてっ……」 「チッ……バレたか。愛だよ、愛。俺は由妃を愛してるんだ。だから抱いてやったんだ」 「……」 「せっかくいいところだったのによ〜。邪魔すんなよ。」 「………あんたなんて最低!由妃の前から消えて!由妃に2度と触れないで!」 そう言い残し、母親は由妃を連れてそのまま家を出たそうだ。 親戚もおらず、最初は行く宛もなく彷徨っていた。誰にも迷惑をかけたくないが、由妃を育てるには、もう1人ではどうにもできそうにない…… 決心した母親は、親友だった僕の両親のところへ訪ねてきた。 そして… 由妃を残してどこかへ行ってしまったそうだ。 そこからは、ご存じの通り。 僕と由妃の暮らしが始まった………… ** 由妃を大切にしたい、幸せにしたい。 その想いだけは誰にも負ける気はしない。 でも、世間的には僕と由妃は兄弟だ。 たとえ血が繋がっていなくとも、家族だ。 ましてや、男同士だ。 絶対に祝福される恋ではない……… それでも…… それでも… ……僕は由妃と共に生きたい。 由妃を、護りたい。 この日、僕は心にそう誓った。

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