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第27話 #由磨side
***
由妃と連絡が取れない。
朝、由妃と一緒に家を出て、午後からどうしても外せない北海道出張があったので、由妃には帰宅したら連絡するように伝えてあった。
現在23時。
………遅すぎやしないか?
今日は研修だと言ってたから、残業はないだろうし定時で終わるはずだ。
でも、定時後の18時に連絡はなかった。
その時、1通連絡を送ったが未読のまま。
それから仕事の合間に何度か電話もかけてみたが繋がらない。
もしかしたら同期と飲みに行ってるのかもしれない。……そう考えもしたが、あんな事があってすぐそんな気になるだろうか?
………何かがおかしい。
研修に疲れて家で寝落ちたのか…
もしくは、電車は危ないからタクシーで帰ってほしいと伝えてあったが、タクシーで事件に巻き込まれたのか?
考えれば考えるほど悪い方にいってしまう。
せめて、電話に出てさえくれれば………
そう願いを込めて、もう一度電話をかけてみたがやはり出てくれない……
明日も仕事で午前中は北海道に居なければならない。本当なら今すぐにでも会いに行きたいのに……
焦る気持ちばかりでどうにもできず、苛立ちばかりが積もっていく。自分の不甲斐なさが許せない。
………そんな時、見知らぬアドレスからメールが届いた。件名は「赤い糸」。
少し不気味な件名にメールを開くか悩んだ。
でもこの状況では藁にもすがる思いで、手掛かりに繋がるなら何でもやりたい。
そう意を決してメールを開いてみた。
すると、本文にはこう記されてあった。
「俺たちは、消えない赤い糸で結ばれてる」
単なる迷惑メールかと思ったが、
添付されていた動画のタイトルが………
……「由妃」だった…。
慌てて動画を再生すると……
そこには、見知らぬ男達に犯されて泣き続ける由妃が映されていた………
僕はそこで動画を閉じた。
こんなの見てられない……
由妃……由妃……
………僕はまた護れなかったのか?
こんな事するのは、絶対あいつだ……
急いで送り主に返信を送ろうと、画面を操作していると知らない番号から電話がかかってきた。
嫌な予感はしつつも即座に電話に出る。
「動画は見てくれたか?よく撮れてるだろ?」
……やはりあの男の声だ。
「くそっ……由妃を返せ!どこに居るんだ!」
「短気だねぇ〜。由妃は今、夢の中でぐっすり眠ってるさ。凄い可愛い寝顔だなぁ。このまま犯してやろうか、クックック……」
「やめろ!由妃に指一本触れるな!由妃から離れろ!」
「それは無理なお願いだな。由妃はもう俺のものだ。お前こそもう2度と由妃に触れる事は許さない」
「なんでお前なんかに指図されないといけないんだ!由妃は僕の弟だ!僕には由妃を護る権利がある!」
「権利?そんなの俺だってあるさ。お前なんかより強固な実の父親っていう権利がな!」
「なっ……………」
僕は思わず言葉を失った。
あんなに由妃を苦しめてる奴が……
昨日の由妃の辛そうな顔が今でも頭に浮かぶ。
誰のせいで由妃は苦しんでるだと思ってるんだ……誰のせいで……こんな…………
僕は怒りを抑えられず、
「お前のせいで由妃が苦しんでるだ!何が父親だ!お前は由妃の父親なんかじゃない!ただの犯罪者だ!」
「ククッ……ひっでぇ言われようだな。まぁいいさ。由妃は俺のところに居るんだから。せいぜい頑張って居場所を探すんだな、じゃあな。」
「ちょっ……待っ………」
無常にも電話はそこで切られた。
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