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第5話 世南④

気がつけば暑かった陽は傾き、空にはぼんやりと夕暮れの色が浮かんでいる。 スマホを持って出なかったので時間はわからないが、午後六時を過ぎた頃だろかと世南は思った。 一瞬舞さんや妹達のことが頭をよぎったが、そのことはすぐに消し去る。 今はただ、白瀬と過ごすことだけ考えていたい。 二人は再びテントの中で白瀬が持ってきた食べ物を食べ始めた。 夕飯代わりだとスナックパンも用意されている。 あの短時間でこんなに準備してくれたのかと、世南は感謝の気持ちでいっぱいになった。 白瀬は相変わらず息を吐く暇もない勢いで話し続ける。 世南が楽しそうに話を聞いていると、白瀬はふと安心したかのような表情で見つめてきた。 「・・へへ。よかった。藤野普通じゃん」 「え・・?」 「うーん、なんかさ・・2年になってから藤野付き合い悪くなった気がしてたっていうか・・なんかあったのかなぁって・・」 白瀬はテントの中で胡座をかいて座ると頬をポリポリと掻いて言った。 「・・・ぁっ」 世南は何か言わなくてはと思ったが、言葉が続かない。 避けていたのは本当のことだ。どう言い訳をしたら良いだろう。 「・・・」 世南が黙っていると、白瀬が覗きこむようにしてジッと視線を向けた。 「あのさぁ・・俺、藤野にはなんでも言って欲しいんだよね」 「え・・・」 「藤野、いっつも笑ってるけど・・でも遠慮してることもたくさんあるじゃね?って思って。愚痴とかさ、なんかモヤモヤしてることあるなら俺に言って欲しいなって」 「・・・」 「あっ、俺ちなみにめっちゃ口かたいからね。その辺は信じてほしい!」 白瀬はトンっと自分の胸を叩いて言うと、歯を見せて笑った。 その笑顔に世南の心がふっと緩む。 それから世南はそっと口を開いて小さな声で言った。 「・・・白瀬、ごめん・・」 「うん?」 白瀬は世南に目を向けた。 「・・色々気にかけてくれて・・白瀬忙しいのにさ・・」 「はっ?!いや、俺別に忙しくないけど?!」 「そんなことないよ。白瀬、いっつも誰かと何かしてるじゃん。今日だって本当は部活の練習だったんだろ?」 「いや、まぁ、そうだけど・・でも別に今日は俺が休むって決めたことだし」 「白瀬はさ、そうやっていつも誰かと繋がってるし、必要とされてるよな」 「え・・」 「俺・・ずっと、家族に邪魔だって思われたくなくて・・だから役に立たなきゃって思って手伝いとかしてたけど、なんか空回ってたみたい・・」 世南は眉尻を下げながらも笑う。その様子に白瀬もじっと黙り込んだ。 「俺は、家にいない方がよかったんだ。なんかバカだよな。俺でも役に立つはずだから、なるべく家に居なきゃいけないなんて思ってさ。本当は・・いる方が迷惑がられてたんだ・・」 「・・・」 肩を落として下を向く世南を白瀬はじっと見つめる。それからポンポンと世南の肩を軽く叩くと言った。 「藤野、今から笑うなよ。笑わないで今思ってること全部言ってみろよ。泣いてもいいし怒ってもいいし。でも、絶対笑うな」 「・・え」 「笑えない日もあったっていいだろ?藤野は・・笑いすぎなんだよ」 「・・・」 その言葉に世南の肩が小刻みに震える。気がつくと瞳は涙で溢れ、目の前がぼんやりと滲んだ。 「・っう・・」 なるべく声は出さないように泣こうと思ったが、白瀬にはすぐにバレたようだ。 白瀬は腕を世南の肩に回すと、支えるようにして優しく背中をさすってくれた。 「・・おれ、がんばってた・・つもりだったのになぁ」 喉を押し潰されたような声で世南は呟く。 「・・うん。藤野、頑張ってたよなぁ」 白瀬は背中をさすりながら頷いて言った。 「・・・ぅん」 白瀬のその言葉にどれだけ救われただろう。 世南はそれから涙が止まるまでうずくまって泣いた。その間、白瀬はずっと隣で背中をさすってくれていた。 どれくらい時間が経っただろうか。 目尻は少し痛いがもう涙はこぼれない。 顔を上げると、隣の白瀬と目が合った。 白瀬は一瞬驚いたような表情を見せるとパッと視線をずらす。 世南はそれを不思議に思いながらも、笑って言った。 「白瀬、ありがと。もう大丈夫。泣くの終わった」 「・・うん」 白瀬は前を向いたまま、短い返事をする。 どんな顔をしていいか迷っているのだろうか。 世南は白瀬の表情を伺うように覗き込んだ。 それからぽそりと呟く。 「あのさ、俺、白瀬といるのがすごい好きなんだ・・」 「え・・」 白瀬がやっと世南に視線を向けた。 「白瀬といると、すごい落ち着く・・」 世南はそう言いながら隣の白瀬の肩にポンと頭を預ける。 「白瀬ってすごいよなぁ・・」 久々に泣いたからだろうか。脳が疲れているのか、ボーッとする。目を瞑ったらそのまま眠れてしまいそうだ。 世南がそう思って目を閉じた時だった。 フッと唇に何かが触れた。 「・・え」 なんだろうと思って目を開く。 すると、鼻と鼻の先が触れるほどの距離に白瀬の顔があった。 「しら・・」 白瀬の名前を呼ぶよりも先に、再び唇に濡れた感触が広がる。 白瀬の唇が世南の唇を覆うように重なっていた。 「ぅん・・」 突然のことでどうして良いかわからず世南は思わずピンと背筋を伸ばして固まる。 すぐに離れるかと思った唇は、さらにグイグイと世南の唇に強く押し付けられた。 息、できない・・ 息を吸おうとパッと大きく口を開けると、その出来た空間にスルリと何かが滑り込むように入ってきた。 「っ・・⁉︎」 何これ・・?白瀬の舌・・? 世南は混乱する頭の中で、細目を開けて白瀬を見つめる。 白瀬の頬は赤く、唇の間からは荒い息遣いが聞こえた。 世南の心臓が早鐘のように鳴る。 わけもわからないまま、世南は白瀬の動きに合わせ同じように唇を重ねていく。 そうしていると、なぜだかだんだん頭がぼうっとしてきた。 身体中が熱い。けれど、なんだか気持ちがいい。 世南がそう思っていると、突然ふと下半身に何かが当たった。 視線を下に向けると、白瀬の掌が世南の股の間に触れている。 その手は少しずつ奥へ奥へと進んでいったかと思うと、世南のものを握るようにグッと力が入った。 「うぁっ・・」 驚きのあまり、世南は大きな声を出す。 しかし、その声を抑えるように再び白瀬の舌が熱を持って世南の中で動き回った。 「・・ふぅ・・ぁ・・しら・・」 なんとか白瀬の名前を呼ぼうとするが、力強く押し付けられた唇からは途切れ途切れの言葉しか出てこない。 気がつけば、白瀬に握られたそこが硬く熱くなっている。 そのことに気づいて世南は慌てて白瀬から離れようとするが、空いている方の腕で肩を押さえつけらてしまった。 白瀬はそのまま優しくそこをなぞり始める。 「・・っあ!ゃ・・」 体験したことのない刺激に世南は身悶えて、思わずギュッと白瀬の服を掴んだ。 この現象がなんなのかは知っている。もう十四歳だ。 クラスの男子の中には、好んでこういった話題を出す者も多い。 世南もそういう時は笑って聞いている。 けれど、実際にはあまりその話題に乗りきれてはいなかった。 夢精も勃起も経験はしている。 去年初めて体験した時はどうしたらよいのかわからず、布団の中でパニックになった。 けれど舞さんには絶対に言えるわけもなく、父に相談する時間もなかった。 一人でこっそりネットで調べ、なんとなく理解はしたがあまりそう言う事に興味が持てなかった。 興味を持ってしまうと、舞さんに汚いと思われてしまうのではないかと思ったからだ。 世南はくすぐったく感じモジモジと両足を閉じようとしたが、白瀬はその間にガッチリと自分の腕を滑り込ませた。 気がつくと、履いていた短パンが下にずらされトランクスの中に白瀬の掌が侵入しようとしている。 「・・!?っや、まって・・白瀬・・」 世南は白瀬の腕を掴んだが、その動きを止めることができない。 そして直接白瀬の熱い手が、世南のものに触れた。 「・・つっ!?」 驚きのあまり世南は言葉が出ず、ギュッと瞼を閉じる。 白瀬の手はゆっくりと世南のそこを上へ下へとなぞり始めた。 「・・うぅ・・ふ・・」 世南はブルブルと震えながら白瀬にしがみつく。 恥ずかしさと初めて感じる快感に、思考がついていかない。 「・・はぁ・・ふじの・・」 耳元で白瀬の声が熱い息と共に漏れた。 その熱にビクリと肩が震える。 「・・っ!あっ・・ふぅぁ・・」 上下に擦られたり先端を指先でいじられたりする度に、自分でも信じられないような声が出た。 それから白瀬の掌の動きは次第に激しくなっていく。 それと比例するように世南の頭とそこはどんどん熱くなっていった。 「・・・っ!!!」 何かがくる・・! そう思った時には、世南は白瀬の手のひらに自身の白い液体を放っていた。 白瀬は茫然とした顔で自分の掌を見つめている。 「あ・・ごっ、ごめん!!」 世南は顔を真っ赤にして自分の手で白瀬の手のひらをゴシゴシと擦った。 ネットリとした自分の精液を見てさらに顔が熱くなる。 なんてことをしてしまったのだろう・・! 恥ずかしさのあまり下を向いていると、スッと白瀬が世南の手を取った。 それからビニール袋に入っていたウエットティッシュを開けてキュッと汚れを拭き取る。 「・・・」 白瀬は何も言わない。 「・・・」 世南も無言でその様子をただジッと見つめた。 白瀬はウェットティッシュをゴミ袋代わりにしていたもう一つのビニール袋に入れると、少し気まずそうに鼻の頭を掻く。 世南は居た堪れない気持ちになり、すっと立ち上がった。 「白瀬・・ごめん、俺・・その、もう帰る」 「え・・・」 白瀬は驚いた顔で世南を見上げる。 「その・・色々準備してくれて、本当にありがとう・・」 世南はお礼を言いつつもモジモジと足元を見つめた。 早くこの場を去りたい。 なんでこんなことになったのか、今の頭では混乱して何も考えられない。 ただ今は、白瀬の手に射精してしまった恥ずかしさでいっぱいだ。 世南は勢いよくテントの入り口のチャックを開けると逃げるように飛び出した。 しかし外を見てギクリと身体が固まる。 中にいる時は気が付かなかったが、もうとっくに日は落ちて辺りは濃紺色の闇が広がっていた。さらにポツリポツリと小さな雨の雫が身体に当たる。 ・・今は一体何時だろう。 こんな時間まで家に帰らなかったのは初めてだ・・ 家に戻ることに躊躇い立ち止まっていると、中から白瀬も出てきた。 「あぁ〜、雨降ってきたなぁ〜・・」 白瀬は真っ暗な空を見上げる。 「藤野・・とりあえずさ、雨止むまで中入って・・」 白瀬はそう言いながらそっと世南の腕を掴む。 「・・つっ!」 しかし世南は思わずその腕を払いのけた。 白瀬は目を見開いた後、眉間に皺を寄せる。 「・・・」 「・・・」 気まずい沈黙が続いた。 どうすればいいのか、世南は分からず動くことも喋ることも出来ない。 その時だった。 「——ぃ!ぉーい!」 遠くから声が聞こえた。それと同時にチカチカと小さな光が揺れいている。 その光と声はだんだんと大きくなり、そして近づいてきた。 懐中電灯を持って現れた人影を見て、世南の心臓が大きく跳ねる。 白瀬の両親、そして舞さんが心配そうな顔でやってきたのだ。 「世南君!よかった!探したのよ!」 舞さんは世南に近づくと両手を世南の肩に乗せて項垂れる。 「・・・舞さん・・なんで、ここに・・」 世南は唇を震わせながら聞いた。 「なんでって、世南君がスマホも持たずに帰ってこないから心配で探しにきたんでしょ!?」 舞さんは世南をキッと睨みつけなる。 「・・家の近く探しても見つからないから、世南君が仲良かった薬局屋さんに聞きに行ったら、そこの息子さんも帰って来てないって言うし・・それでみんなで探しに来たのよ」 舞さんは横に立っている白瀬の両親に目をやった。 「テントが無くなってたのと、近くの商店で康成が色々買い出ししてたって聞いてね。どこかでキャンプごっこでもしてるんじゃないかと思って」 そう言いながら白瀬の母親がフゥとため息をついた。 世南は皆がここにいる理由に納得しつつ、ふと疑問に思ったことを聞いた。 「・・・愛佳と夢佳は・・?」 「二人はお隣りのお家に見てもらってるわよ。パパはまだ帰って来てないんだから・・」 「・・そう、ですか・・ごめんなさい・・」 世南は下を向いてポツリと言った。 「一体どうしたの?何も言わないで急にいなくなるなんて。今までそんなことなかったじゃない?」 「・・それは・・・・」 どう言い訳をしたら良いか思いつかず世南は下を向いたまま黙りこむ。 その様子に苛ついたのか、舞さんは世南の両腕を強く握りしめて叫んだ。 「ねぇ!わかってるの?家にはまだ小さい子が二人もいるのよ!?もう眠くてグズっていたのに、それでも預けてあなたを探しに来たの!勝手なことされたら大変なのよ!」 「・・・っ・・」 世南はその言葉に思わず唇を噛んだ。 「あ・・・」 ごめんなさい——そう言葉を続けようとした時だった。 「うっわ〜!ごめんなさい!」 世南よりも先に、白瀬の大きな声の謝罪が川原に響いた。 「違うんですよ!藤野は悪くないんです!俺がどうしてもキャンプやりたいなって思って、そしたらちょうど散歩してた藤野に会ったから強引に誘ったんです!」 白瀬は舞さんをまっすぐ見つめながら大きな声で話した。 「藤野はすぐ帰らなきゃいけないって言ってたのに俺が引き止めたんです。せっかく食べ物も買ったから勿体無いしさ。それで・・藤野、優しいから自分から帰るって言い出せなかったんだと思う。ごめんな藤野」 白瀬はそう言ってパンと両手を合わせて世南に謝りのポーズを向ける。 「え・・・」 世南は戸惑いの表情を浮かべながら、どう言うべきか考えた。 白瀬が庇おうとしてくれている。 でも真実は違う。家に帰りたくない自分に白瀬が付き合ってくれたのだ。 巻き込んだのは自分の方なのだ。 ここで白瀬に泥をかぶせるわけにはいかない。 「あ、あの・・」 世南が反論しようと声を上げたが、それよりも先に白瀬の父親からの鉄拳が白瀬の頭に振り落とされた。 「本当にこのバカ息子は!人様に迷惑をかけるんじゃないよ!」 白瀬の父親が叫んだと同時に、白瀬の母親が深々と頭を下げて言った。 「本当に本当に申し訳ありません・・ご迷惑をおかけして。ほら康成、あんたももう一度謝りなさい!」 「はぁい。すみませんでした・・」 白瀬もペコリと頭を下げる。 舞さんは怪訝そうな顔をしながら、白瀬を見て言った。 「・・白瀬君、うちはね、まだ小さい子もいるから世南君にも色々守ってもらわないといけない事も多いの。だから、あんまり世南君を巻き込まないでね」 「はい・・すんません!」 白瀬は再び背筋を伸ばして頭を下げる。 「あの、ここの片付けはやりますから、藤野さんと世南君は先に帰っていてくだい。妹さん達も待ってるでしょ」 白瀬の母親は気遣うように舞さんと世南に目をやった。 「・・そうですね。すみませんけど、そうさせてもらいます。世南君、行くよ。愛佳と夢佳、早く迎えにいってあげなくちゃ」 舞さんはそう言うと、足元を懐中電灯で照らしながらもう歩き始めた。 「あ、あの・・」 世南は弁明しようとしたが、舞さんはどんどんと進んでいってしまう。 世南はチラリと白瀬に目をやった。 白瀬は両親に何か言われながら、テントの中のゴミを出し始めている。 その時、手に持っていたビニール袋を見て世南の心臓はドキリと揺れた。 先ほどあの中で起こったことを思い出す。 そしてその後始末を今から白瀬と白瀬の両親で行おうとしている。 世南は居た堪れない気持ちになり、項垂れるようにして舞さんの後をついて帰って行った。 舞さんが何も言わないので世南も無言で歩き続ける。気がつけば足に靴擦れができていた。サイズの合わないサンダルなのだから仕方がない。 いつもの橋の近くに来たところで、舞さんがやっと口を開いた。 「世南君、今の私にあんまり余裕がないことはわかってるの。それは・・ごめんなさい」 「・・え」 「ちゃんと世南君のことまで見てあげれればいいのだけど、どうしても娘達でいっぱいいっぱいになっちゃう・・」 「・・・」 「でも、だから・・協力して欲しいの。あんまり心配させるようなことは、しないで・・」 舞さんが小さなため息をついて言う。 「・・・」 舞さんが何を言いたいのかはわかった。 そして、その舞さんの言いつけを守ることは、舞さんに協力できるということだと・・ 「・・うん。わかってます、舞さん」 世南はコクンと頷く。 「心配かけて、ごめんなさい・・」 白瀬に、罪を被せてしまった。 舞さんの機嫌を取るために。舞さんに心配をかけないために。 そのことを、白瀬に謝らなくてはいけない。 けれど、少しだけ時間を置きたかった。 ・・あんな恥ずかしい姿を見られて、白瀬にどんな顔で会えばいいのかわからないから。 あれは・・なんだったのか。 白瀬はあの時、なんであんな事をしたのかを。 少しだけ、考えさせて・・ ーー ガタンと電車が揺れる。山を越えるトンネルに入ったのだ。このトンネルを抜けたらすぐに降りる駅だ。 世南はぼんやりと窓ガラスに映る自分の姿を見つめた。 今年で十七歳。 他人に触られる体験はあの日から一回もしていない。 あれから色々考えたが、結局ちゃんとした答えはわからないまま時間だけが過ぎていった。 白瀬から感じた視線や吐息を思い出すとカァっと顔が熱くなる。 白瀬のあの顔を知っている人は他にいるのだろうか。 もしかしたら、自分だけが特別なのかもしれない。 そんな浮ついた考えもあの時には頭をよぎった。 けれど・・ 答えを聞く前に白瀬には一つ上の彼女ができていた。しかもそれが最初は体の関係から始まったなんて噂も飛び交った。 その噂を聞いた時に、白瀬にとってあれは誰とでもできる些細な事だったのだと思い直すことにしたのだ。 自分だけが気にしていて恥ずかしい。白瀬にとっては大したことではなかったのだと。 そう思っていたけれど・・ 先ほどの白瀬の言葉が蘇る。 白瀬は「勘違いしていた」と言っていた。 その言葉がもし、本当ならば・・ あの時、白瀬から感じた熱は間違いではなかったのかもしれない。

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