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第3話 俺は川辺誠!

 俺と薫は周りに恋人同士だと言うことは隠さなかった。 親にもきちんと紹介し合っていた。 とやかく言う連中なんて、全く眼中になかったんだ。宣言したほうが、どれだけ安心出来るか。 じゃなきゃ、薫が誰かに告られる事だって起きてくる訳で。そんなこと冗談じゃない! 薫は俺のものなんだ。 本当に可愛くて可愛くて、どうしようもないんだ。 薫と愛し合うことは、俺にとって生きる事そのものだった。  それが付き合ってから、五ヶ月が過ぎたある日、あいつは突然消えた……引っ越しした様子はないのに。人間だけがいなかった。携帯も繋がらない。    あいつが俺に何も言わすにいなくなるなんて考えられない。 薫……大丈夫なのか? お願いだよ! 連絡くれよ! 俺たちは、前日まで二人の将来のことや夢を語っていたのに。 何かに悩んでいる様子もなかったと思う。いや……俺が鈍くて、判らなかっただけなのか? お互いの温もりに包まれる毎日が欲しくて、同じ大学に通うことにした。同棲する部屋も決めていたんだ。俺たちは物凄く楽しみにしていたよな。薫……なぁ薫……何故……何処に行ってしまった? 俺は狂い、思考は完全に停止していた。 だが、親やクラスメイトのお陰で何とか卒業はする事が出来た。それは感謝しかない。  大学には無理してでも通った。 もしかしたら、もしかしたら薫に逢えるかも知れないと思い続けていたから。  俺の隣にいるはずの温もり。 ふたりで生きるはずの人生。 すべてが消えた。死ぬことも出来ずに 今もただ生きている。  恋愛なんて呼べるものでは無かったが、ふたりの同性と付き合いはしたものの、長くは続かなかった。 理由は判っている。 春木薫では無いからだ。 それだけのことなんだ。 でも、その事実はあまりにも重くて、苦しい。今もそこからは抜けられない。 だが、俺もこのまま無駄に年は取りたくない。出来ることなら忘れたいよ!  立ち直りたいんだ! 畜生! 今年こそ、共に生きるパートナーを捜すぞ。 俺 川辺誠 37才 ゲイだ! マルボツ商事勤務 営業部  第二営業課長はパートナー募集中! 看板でも背負って歩くかぁなんてな。 俺は馬鹿か? 阿呆らしい。 その前に仕事だ! 仕事だ。

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