4 / 36
第3話 俺は川辺誠!
俺と薫は周りに恋人同士だと言うことは隠さなかった。
親にもきちんと紹介し合っていた。
とやかく言う連中なんて、全く眼中になかったんだ。宣言したほうが、どれだけ安心出来るか。
じゃなきゃ、薫が誰かに告られる事だって起きてくる訳で。そんなこと冗談じゃない! 薫は俺のものなんだ。
本当に可愛くて可愛くて、どうしようもないんだ。
薫と愛し合うことは、俺にとって生きる事そのものだった。
それが付き合ってから、五ヶ月が過ぎたある日、あいつは突然消えた……引っ越しした様子はないのに。人間だけがいなかった。携帯も繋がらない。 あいつが俺に何も言わすにいなくなるなんて考えられない。
薫……大丈夫なのか? お願いだよ!
連絡くれよ! 俺たちは、前日まで二人の将来のことや夢を語っていたのに。
何かに悩んでいる様子もなかったと思う。いや……俺が鈍くて、判らなかっただけなのか? お互いの温もりに包まれる毎日が欲しくて、同じ大学に通うことにした。同棲する部屋も決めていたんだ。俺たちは物凄く楽しみにしていたよな。薫……なぁ薫……何故……何処に行ってしまった? 俺は狂い、思考は完全に停止していた。
だが、親やクラスメイトのお陰で何とか卒業はする事が出来た。それは感謝しかない。
大学には無理してでも通った。
もしかしたら、もしかしたら薫に逢えるかも知れないと思い続けていたから。
俺の隣にいるはずの温もり。
ふたりで生きるはずの人生。
すべてが消えた。死ぬことも出来ずに
今もただ生きている。
恋愛なんて呼べるものでは無かったが、ふたりの同性と付き合いはしたものの、長くは続かなかった。
理由は判っている。
春木薫では無いからだ。
それだけのことなんだ。
でも、その事実はあまりにも重くて、苦しい。今もそこからは抜けられない。
だが、俺もこのまま無駄に年は取りたくない。出来ることなら忘れたいよ!
立ち直りたいんだ! 畜生!
今年こそ、共に生きるパートナーを捜すぞ。
俺 川辺誠 37才 ゲイだ!
マルボツ商事勤務 営業部
第二営業課長はパートナー募集中!
看板でも背負って歩くかぁなんてな。
俺は馬鹿か? 阿呆らしい。
その前に仕事だ! 仕事だ。
ともだちにシェアしよう!