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第6話 そんな!
俺の働いている会社はデカい。
毎日何千人も人がこのビルを出たり入ったり為ている。出会う人間もプレート見なきゃ会社の奴がどうか判らん。
今朝も混んでるエレベーターに乗り込む。
人、人。見たくも無い光景が鬱陶しくて目を瞑る。
「ねえ私見たよ! あの人だよね。
ほらみんなが噂してる人。いつからここに来ていたのかな。知ってる?」
「そうなのよ、でね、早樹ちゃん話しかけたんだよ! すごい度胸だよね。
そしたら、もう三年はここで働いているって!」
「えっ! 嘘~あんな素敵すぎる人に
気づけない私たちって目節穴かよ。
イケメンいやいや超絶美人だよありゃ」
うん? なんの話しだ?って君たちは何処の会社だ? 薄目でプレートを見ると、最上階のレストランで働くお姉さんたちだ。何だかんだ気になるなぁ
超絶美人って……イケメンって言うからには男だよな。
なおも話しは続くようで、
「名前なんだった? 警備会社のプレート付けてたのかな?」
「えーと、早紀ちゃんなんて言ってたかなぁ。うーん、なんかね……確か女の人の名前みたいだったような。一文字だった」
俺は勝手に口走っていた
「薫……」
シーン……そして次の瞬間、
「そう! そう! それだ! 薫だった~」
女性陣は大喜びしている。
「あれ? でもよく分かりしたね」
「あっ……昔友達にいたんですよ薫って言う奴が」
「そうなんですか。へぇ……でもまさか 苗字が春木なんて言いませんよね。
そこまでの偶然あるわけないし。
でも印象的な名前ですよね。春の木に薫なんて。名は体を表していました。その方」
俺は血の気が引いていくのを感じていたが、
「ほう春木薫かぁ。本当綺麗な名前だね
でも違ったなぁ残念! じゃ、お先に」
俺は笑いながらエレベーターを降りた。
吐きそうだ……震えが止まらない。
「薫……薫……」
トイレに飛び込むとそのまま膝から崩れ落ちた。春木薫……薫なのか……嘘だろう。
なぁなぁ薫……薫。
声がでない苦しい……
薫……なんだよ! 今すぐ俺の前に現れろよ!
馬鹿!馬鹿!逢いたかった。
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