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第12話 腹が立つ!怒りもある。でもそれ以上に愛しい
縋り付いてきた薫を、突き放すことが出来ない。過呼吸を起こすほど苦しくなるような事が薫の身に起きていたのか。
それでも俺の怒りは収まらない。
愛しいのに……愛しいからこそ、何も知らないことが悔しいんだ。お前の二十年は俺には話せないことなのか。
薫! 答えてくれ。薫? 落ち着いたか? まだ背中がヒクついている。
片膝立ちしている足が痺れてきている。
「薫動けるか? ソファに移動したいんだ。その方が落ち着つくだろ?」
抱きかかえて、ソファに座らせると、
「ごめん取り乱して。もう大丈夫だから」
そう言うと、俺から離れようと体を捩った。それが無性に腹だたしかった。
「もっと寄れよ」
思わず声を荒げてしまった。
薫は、ビクビクしながら少しだけ近寄ってきた。
「ああ~苛つく。こっちだよ」
俺は乱暴に引き寄せると、薫の体を腕の中に収めた。
「誠……いやじゃない?」
「嫌だよ! すげぇ不愉快だ! でもそれ以上にこうしたいんだよ。薫……薫……逢いたかった」
「誠……誠……まこちゃん……まこちゃん……まこ……」
どんだけ呼び合うんだよ。ったくみっともねぇな。本当みっともないんだよ。
でも足りねぇよ!全然足りねぇよ。
声がこれるほど呼んでやる。
腕の中に押し込み、抱え込み、抱き締める。少しでも気を緩めたら、お前が消えそうで怖いんだよ。薫……
二十年も逢えなかった愛しい人。
もう離れない。 絶対離さない。
何があっても。
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