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第13話 薫の二十年
薫は俺から少し体を離し座り直すと、
しっかりした口調で話し始めた。
「話すならちゃんと話したい。でもね、途中で聞きたく無いって思ったら、いつでも言ってね。無理しないで欲しいから。良い? うん。じゃぁ始めるね。
家が会社経営しでたのは、誠も知っていたよね。それが潰れて……本当僕には突然だった。親は何も話してくれてなかったし、でもそれに気が付けない僕は大馬鹿だった。本当間抜けな話しさ。
あの日、誠が家まで送ってくれたでしょう。その後は、普段通りに夕飯を食べて、フロから出て宿題を始めようとしていたら、いきなり父親が部屋には入ってきて。今すぐ身の回りのもをスポーツバックに詰めろって、何なが何だか判らないまま言う通りにはしたけど。
父親の様子があまりにも異様で、何も聞けなかった。その時携帯を父親に取られて。身元が判るものはすべて置いていく。着替えと現金、後、本、筆記用具は許されたけど。その指示をしてたのは夜逃げ屋さんだった。夜中になると、迎えの車が来て。何時間も走り続けたよ。
寝て起きてたら、知らない町に運ばれてたんだ。父親に誠だけには連絡とらせて欲しいって何度も頼んだけど、逆に誠に連絡なんかとったら、大迷惑になると言われて。それは絶対嫌だった。だからその時に誠の事は諦めるって決めたけど。でも苦しくてさ、本当に毎日泣いていたよ」
一気にそこまで話すと、薫は目を閉じて黙ってしまった。気持ちを落ち着けていたのだろうか。目を開けるとまた話し出した。
「暫くは三人で細々と暮らしていた。
広島県の何処だったかな~田舎だよ。
兎に角田舎だった。でもね闇金って凄いよ。追ってくるんだよ。そして見つけるんだ。
ある日、僕が買い物に出ている間に、母親は闇金に連れて行かれた。そして次は父親が居なくなった。僕はたったひとりになってしまってね。怖かった……逃げたけど、そんなのすぐに捕まるよ。
その時言われたのは、臓器は良いお金になるって。特に僕は若いから……
そっか僕は、もう死ねるんだって思ったら嬉しかった。こんな生活が終わるンだもの。親もいないし、どうにでも為れってね。
だけど、そうは簡単にはいかなくてね。
男娼にする若い男の子を探しているって言う話しが舞い込んてきて。
それも十七、八の男の子が良いって。
それで男娼として僕は売り飛ばれたんだ」
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