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第31話 ひとつひとつ
俺たちはいつ結婚しよう? そしてどちらの姓になるか? 薫は通称は春木薫だが、戸籍上は砂川姓になっていて財産も結構相続しているそうだ。
俺の方は姉貴がひとりいる。
一応嫁に行っていて男の子が二人いる。
俺たちにとって何が一番良い方法かは弁護士にでも相談するしか無いが、それより何より薫が、俺の親に会いたがっている。高校時代お互いの家に結構遊びに行っていたし、俺の家族は薫が大好き過ぎて、早く一緒に住め住めと煩さくて仕方なかった。薫はそれを良く覚えていて、独り懐かしんでいたと頻りに話す。
「誠、何はさて置き、川辺のご両親にご挨拶したいの」
「判ってるよ。確かに……うちの家族も逢いたがるよって言うか、驚いて心臓止まるかもって。善は急げだ! 今から連絡してみる」
「あっ! 母ちゃん。ああ~ごめんよ……少し黙って! 黙れ! 親父は? 親父いないの? いるの? いるならビデオ通話にしてくれ……違うよ! それはテレビだろ! もう~親父も判らない? はいはい悪かった! 俺が悪かった」
薫は笑い転げている。緊張取れたなぁ
「母ちゃんいいか!良く聞けよ……春木薫覚えてる? 俺の恋人の。だよな忘れる訳ないよな。うん、うん、そうだった。でね、驚くなよ! その薫が今ここに居るんだ! 嘘じゃない! 噓なんか言わないよ! 泣くなよ! バカ! うん、うん、今替わるから」
「もしも? おばちゃま? は…い 薫……です。はい……ごめんなさい。本当にごめんなさい。うん……ご心配おかけして……はい元気でやってます。……両親で……えっと……あっ…ウッ……」
我慢の限界だった。薫は膝から崩れ落ち
そうになるのを俺は抱き止めた。嗚咽で最早話すところでは無い。
「悪いけど母ちゃん、詳しい話しは今度薫と帰ったとき話すから……そっちの都合聞かせて……うんうん今週土曜日……どう? 薫」
薫は頷く。
「それでさ、姉貴にも都合聞いて欲しいんだ。駄目なら姉貴は次回にするから。 お昼前には着くようにする。はいはい じゃ親父によろしく言っといては~い伝えるよ! バイバイ」
「ごめんね泣き出して。懐かしくて、嬉しくて……こんな僕に会ってくれるなんて感謝だよ」
「なに言ってるの? お前バカか? 当たり前だろう? 俺たちのことを理解して応援為ていたんだから。薫の……親だってそうだったろ?」
薫は頷き、堪えきれずにまた泣きたした。
「……うん……もち……ろん喜んでくいるよ。だって誠のこと大好きだったし。僕達の将来を、物凄く楽しみにしていてくれてたもの」
本当に俺たちは恵まれていた。
両方親は同性愛に理解があった。
好きなものは誰にも止められないと……。どんなことも二人で乗り越えられるのなら、守りも為るし、応援だってと言ってくれていたんだ。
これから、やらなければならない手続きは山のようにある。
でも今はワクワクするんだ。
その先にはあるものは「夫夫」
夢にまで見た人生。なぁ薫。
忙しくなるぞ。
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