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第18話
昼休みになり購買部で莉羽の好きないちごミルクとツナパンを買って屋上へと来た。
「は、は、話とはなんでしょうか」
「ああ、俺がここに来た理由が気になってんだろ」
そりゃもちろん。だってここ普通の高校だよ?
芸能人が通う高校とかじゃないんだよ?
「うん、まあ……」
「ドラマ決まった。だからあんまり家に帰れなくなるからキモオタのお前だし俺の顔見れなくなったら寂しいだろ?少しでも顔見せてやろうと思って」
ごめん、ごめん。情報量多すぎてなにから反応すればいいかわからないんだけど。
とりあえずドラマが決まったことにも叫びまくりたいし、僕のためにわざわざ学校まで通ってくれることに対しても叫ばして頂きたい。
「お、お、おめでとう!!えっと……色々驚きすぎてあんまりいい反応ができない……」
「おう。まあ学校も毎日は来れないんだけどな」
いえいえ……!気持ちだけでも嬉しすぎて死にたいです!もう本当にどれだけ虜にすれば気が済みますか?
「はあ……ダメだ。尊い。もうダメだ。莉羽の虜になりすぎてもう僕ダメだ。死ぬ」
「やっぱキモイわ」
住む世界が違うとわかっていながら莉羽がこんなに僕のことを思ってくれているこの奇跡。
本当に沼って抜け出せない。莉羽の罠から抜け出せないよおおおおお……!
その時、一枚の葉っぱが莉羽の髪に落ちてきた。
それを取ろうとする僕と莉羽の手が少し触れた。
「うわあああああ!ご、ごめんなさい!手に……手に触れちゃいましたああああ」
「なんでそんな驚く必要あんの」
「莉羽様に僕みたいなキモオタが触れちゃダメに決まってるじゃないですかあああ!消毒!消毒して!僕、毎日消毒持ち歩いてるから!早く!手出して!はーやーくー!!!」
ポケットから消毒を出して莉羽に吹きかけようとした時、莉羽がその手を止めた。
「何してるの?消毒……」
「握手会の時、握手したのに?ハグもしたのに?」
「それはアイドルとしての莉羽だから!今はプライベートじゃん!」
そう言うと、僕の手のひらの上に自分の手を置いた。
「自分みたいなとか言うな」
「え?だって莉羽は僕の推しだよ?神様よりも仏様よりも尊い存在だよ?僕なんかが触れちゃったら美しい莉羽が汚れちゃうじゃん」
オタクはみんなそう思ってるよ。
自分の推しは本当にどんな存在よりも尊いんだ。
だから、
「それはお前が汚いってことか?」
「汚い……んー、汚いかも!」
「アホくさ。俺のファンのこと侮辱してんじゃねえよ。とくにお前のこと侮辱する奴は……なんもない」
自分が僕の手に置いてきといてなぜかパシッと手を叩かれた。
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