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第21話

「つまんないつまんないつまんないつまんないつまんなーい!!!!」 莉羽が家に帰らなくなって1ヶ月が過ぎようとしていた。 1ヶ月経つというのに莉羽がいない毎日は慣れなくて寂しくて何でもいいから早く顔を拝ましてほしい。 そりゃ毎日LIMEで自撮り送ってくれるよ?でもさ生の莉羽が見たくて見たくて仕方ない。 「テレビでも見よーっと」 ポチッ。 何気無く付けたテレビには莉羽が映っていた。 画面越しの莉羽……尊い!尊い!尊い! お昼の有名番組に出演していてすごいなあって思いながら見てたんだけど…… なんかこの女優さん距離近すぎない?やめてよ!みんなの莉羽なんだぞ……! 「絶対狙ってるじゃん」 画面越しからでもわかる。 明らかに莉羽を見る目は獲物を狙う目だ。 『莉羽さんは好きな食べ物とかありますか?』 ふん!僕知ってるよ?フランスパン! 『野菜たっぷり雑炊ですかね』 え……?う、う、嘘でしょ……? それってこの間、僕が莉羽に作ってあげたやつだよね? 『ご自身で作られるんですか?』 『えへへ、内緒です』 は、可愛い。えへへって。 まあ確かにここで作ってもらってますなんて言ったらファンの子達が発狂しちゃうしね。 しかも絶対ネットニュースとかになって彼女探しとかされるだろうし。アイドルは大変だなあ。 「もう可愛すぎるからLIMEで聞いてみよっと」 〈莉羽がテレビで言ってた好きな食べ物って僕が作った雑炊のことだよね?〉 ピコン はや、秒じゃん。 〈うん、そろそろ俺が恋しくなった?〉 ひゃー!!!!やっぱ僕の雑炊!!嬉しすぎて今なら飛び降りれそう!! 〈早く帰ってくるのを待ってます〉 〈黙れキモオタ〉 相変わらず唐突にくるけど推しとLIMEできてるだけで僕は幸せすぎるよ。 でも推しがいなくて寂しいってなんか変じゃない? いや変ではないけどなんか違うくない? 〈莉羽が載っている雑誌は全て買い漁りました〉 〈きめえことすんな〉 〈えへへ。あ、そういえばオタ友ができました。LieNのおかげです、ありがとう〉 〈女?男?どっち〉 え、なんでそんなこと気になるの? はっ……!まさか心配してくれてるんじゃ!? いやいや……おいくそ僕、おこがましいぞ。死んで詫びろ、くそったれ。 〈女の人だよ〜〉 〈きも〉 どうしてそんなこと言うんだよ! 僕のせっかくできた友達なのに。酷い。 莉羽だって女優さんに距離近いし嬉しそうじゃないか! ギュンッ ほら、まただ。またこの痛み。 ただ痛いだけじゃない、苦しくて、しんどい。 莉羽のことになると僕はこの痛みに苦しめられる。

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