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第28話
お昼休み。莉羽のために作った弁当を莉羽に渡した。
「しっかり栄養とらなきゃね!」
「……母親かよ」
「……迷惑だった?」
「いや食べる。さんきゅ」
莉羽が嫌いな物はいれてはいない風に見せかけて本当は人参をしっかり混ぜ込んでいる。
だって野菜をしっかり取らないと健康な体にならないじゃないか!
「どう……?おいし?」
「揺瀬のご飯はおいしい」
「よかったー!朝早く起きたかいがあったー!」
「俺に尽くしすぎだろ」
「当たり前でしょ!栄養取れてないんじゃないかと思って心配してるの!僕は莉羽のファンなんだから別にいいでしょ!」
「……キモオタ」
ククク……人参だって知らずにむしゃむしゃ食べやがって!
まあ言っちゃったら「いらない」とか言われそうだから絶対言わないけどね?
「なあ」
「んー?」
「揺瀬は将来なにになりたいとかあんの。俺らもう高二だし。絵……とか書くの?お前うまいし」
そうなんだよね〜。そろそろ本格的にちゃんと考えなきゃとは思ってはいるんだけど何がしたいかとか正直わからない。
確かに僕は絵を描くことが好きだし、自分で言うのもなんだけどかなり上手いとは思うんだけど絵の世界でご飯なんて食べて行ける?無理でしょ。
だから普通に会社員でもしようと考えた、考えたんだけど仕事しだしたら莉羽にかけれる時間もなくなるんだろうなって思ったら寂しいというか。
「わかんない。僕はなにがしたいんだろ」
「絵……じゃないんだ」
「成功する人なんてほんのひと握りでしょ。いっそのこと莉羽と同じで芸能人にでもなろうかな」
冗談、冗談なんだけど莉羽は急に立ち上がって僕の前に立った。
「絶対ダメだ。変な奴が寄ってくるだろうが」
「え?なにその心配。莉羽こそ母親みたいじゃん」
僕なんかが芸能界の世界で活躍できるわけないじゃん。
なんの才能もないんだから。
顔だって莉羽みたいにかっこよくないし、歌もダンスもできない。
「俺は……絵の世界に行ってほしかったけど」
「むりむり!僕なんかが無理だよ」
「する前から諦めんな」
「莉羽にかけれる時間なくなっちゃうから大人になんかなりたくないもん!」
「はあ……?それは無理だろ」
わかってるよ。わかってるけど大人になんかなりたくない。
この先のことなんてわからないんだから莉羽が僕の家にずっといてくれる保証だってないじゃん。
いやそもそも住んではないんだけど。
正直……今の関係が続いてるかなんてわかんないじゃん。
だったら僕はずっとこのままがいいって願うに決まってるじゃんか。
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