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第29話
あれから莉羽は毎日忙しい日々を送っている。
学校とバイトを行き来する僕とアイドルとして頑張ってる莉羽。
同じ年齢だというのにほんと尊敬するよ。
莉羽が忙しくしているのもあって僕達は中々会えずにいた。
弁当を渡した日が最後にあれから二ヶ月。
もうすぐ高校二年生も終わろうとしていた。
「三年かあ……」
「早いな、すぐ大人になるな」
「なりたくないよ……凛太郎は実家継ぐんだっけ?」
「ああ、まあな」
凛太郎は実家が農家だということもあり高校卒業後すぐ実家を継ぐらしい。
夢すらない僕なんかよりよっぽど凄いよ。
「僕さ、前に莉羽に言われたことがあるんだけどさ絵の世界に行ってほしいって」
「うん、それで?」
「だからちょっと頑張ってみたんだよ。コンテストに出してみたりさ〜でもやっぱり上手くいかなくて落ち込みそうだよ」
「最初はみんな失敗だらけだろ」
まあね、そうなんだけどね。
1回ダメだと分かったら落ち込んじゃうよね。
「はー……僕はなんでこんなにも才能がないんだろう」
「才能だけでみんな生きてねえよ」
「そうなの?」
「そりゃあな。俺らが知らないだけでみんな努力してるんじゃね?」
ヤンキーのくせに。今だって僕の隣で煙草をプカプカ吸ってるくせに。
たまにはいいこと言うではないか!凛太郎め。
努力か……確かにそうだ。
そうか、僕には努力が足りないんだ!
絶対、絶対、絵で有名になって莉羽に今以上に貢ぐぞ!
「凛太郎!お前は良い奴だ!」
「は?急になんだよ」
「僕の親友!アイラブユー!」
「……」
ピコン
そんな時スマホの通知がなった。
〈ドラマの撮影おわったけどアイドル活動も忙しいからまだ当分、家に帰れない〉
はあ……そっかあ。
LieNのチケットも中々当たらないし、莉羽に言えば取ってくれるんだろうけどオタクとしてそれはよくないと思うんだ。
「凛太郎……焼肉の約束は……」
「お前いつの話してんだよ。あーもう!しゃあなし今日行くぞ!」
「凛太郎さまさまでございます!よ!日本一!」
「ほんと調子いいな、おまえ」
僕も絵の世界、頑張ってみるからさ?高級焼肉でも奢ってよ。凛太郎くんよ。
「お前……なに企んでんだ?」
「な、な、なにが?なんの話し?今日何時にする?LIMEして……あっ!!さーちゃんも呼んでいい?」
「さ、さーちゃん?誰だそれ」
「僕のオタ友だよ!前話したでしょ!その子!」
「まあ……いいけど」
さーちゃんも将来どんな夢持っているのか気になるな。
みんなちゃんと将来の計画たててるんだろうな。
本当、僕って……莉羽のことしか頭にないただのオタクだ。
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