30 / 73

第30話

「おーい!さーちゃん!お久ー!」 「ゆっちー!お久ー!」 凛太郎はなにを察したのか高級焼肉店に連れてきてくれた。 高校生だというのにさすが農家の息子!金持ちだ……! 「あ、どうも。こいつがお世話になってます」 「あ、こちらこそ。今日はお邪魔してしまいすみません」 「こいつが誘ったので気にしないでください」 二人してそんなこと言わないでもいいじゃないか! 僕は今日は二人に真面目な話したくて集まってもらったんだから! まあ凛太郎の奢りだけど…… 「好きなもの頼めよ」 「……ほんと心広いなあ、凛太郎」 「はいはい、そりゃどーも」 僕はタンが大好物だからタンを三人前と、カルビとユッケを頼んだ。 「僕が焼くから!」 「あ、そうか?じゃ頼むわ」 「さーちゃんもいっぱい頼んでね!凛太郎の奢りだけど!」 ジュー…… ジュー…… やばい、ただ「将来の夢決まってる?」って聞くだけなのになんでこんなに緊張するんだろう。 もし「決まってる」とか言われたら僕だけ置いてきぼり感が半端ないぞ。 「さーちゃんって将来の夢とかあんの?」 え!? 凛太郎ナイスすぎる! さすが僕の親友。僕が聞きたいことを全て聞いてくれる天才なのか!? 「将来の夢も何も私大人だよ?」 「「え?」」 僕と凛太郎の声が重なった。そりゃそうだろう。 僕達はさーちゃんを勝手に未成年だと思っていたからだ。 どこからどう見ても幼い……幼いじゃないかああああ! 「え?え?さーちゃんって何歳?え?」 「私22だよ?よく見えないって言われるから慣れてるけどまさかゆっち達と同じ学生だと思ってた?いやん!若く見られて嬉しい♡」 は?は?は?ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! 僕は年上の女性になんて馴れ馴れしい態度を今まで取っていたんだ…… 「すみませんでしたあああああ」 「え〜?なんで?友達に歳なんて関係ないからそのままでよくない?」 凛太郎に「馬鹿野郎」と目線で送られた。 僕も本当にバカだと思った。ごめんさーちゃん。 「……。さーちゃんはなんの仕事してるの?」 「OLだよ!OL!普通にOLしてまーす!」 なんだ、さーちゃんは大人なのか…… 僕はなんのために呼んだんだ…… 「アハ、アハ、アハハ……そっか、そう、だよね、アハ、アハハ……」 「ゆっち達は将来何になるの〜?」 「……凛太郎は実家継ぐし、僕はこれといったものが見つからなかったからさーちゃんに聞こうと思って今日呼んだ……」 「あー悩んでたからって話?なんかごめんね?」 いや、うん、大丈夫。大丈夫だけど…… 僕こそなんかごめんなさい。 やっぱり僕は絵を書くことに専念します、はい。

ともだちにシェアしよう!