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第31話

さーちゃんの件は驚いたけど、みんなで仲良く焼肉を食べたし次はデザートだ。 と、その前に…… 「僕ちょっとトイレ行ってくるね〜」 トイレに向かう途中でデザートは何を食べようかとルンルンで考えていた。 トイレの前でカップルらしき人達がなにやら言い合いをしていた。 「なんで私じゃダメなの!?」 「興味ない」 「だったら無理矢理キスするから!」 「本当やめてもらえない?」 なんちゅー喧嘩だ。 こんな高級焼肉店でなんちゅー喧嘩をしているのだ。全く。 ただの好奇心だった。好奇心でカップル達の顔を見てやろうと思った。 「え……?」 そこにいたのは紛れもなく莉羽だった。 僕は驚きのあまりその場から動けないでいた。 「ちょっとあんた!なにジロジロ見てんの?空気読みなさいよ!」 いや、うん。僕だって今すぐこの場から立ち去りたいよ。 けど、体が動かない。 「え、揺瀬……?」 どうして莉羽がそんな驚いた顔するの? 「ああ……ええと……ひ、久しぶり?」 「お、おう。あ、その……これは違くて……」 わかってるよ。莉羽が必死に拒否してたの僕ちゃんとこの耳で聞いたから。 なのになんかモヤモヤして泣きたくなっちゃって。 「別になんとも思ってないから!僕は何も聞いてないし、何も見てない!誰かに言うとかしないから!大丈夫!だって僕、莉羽のファンだもん!」 実際、何も無かったじゃないか。 ただ莉羽が言い寄られていただけで。 わかってる、わかってはいるんだけど心臓が痛い。 「揺瀬!俺が困るんだよ」 なにが?なにが困るの? 僕が誰かにバラすとか思ってるの? オタクの僕達にはそんなこと出来るわけないでしょ。 わざわざ推しを困らすようなことなんてしないよ。 「だからバラさないって言ってるじゃん」 「いやそうじゃなくて……あーもう。ちょっと来い」 莉羽に腕を掴まれてそのまま焼肉屋の外へと出た。 「なに?僕、人待たせてるんだけど」 「お前何に対して怒ってんの?」 そんなの僕だってわかんないよ。 「怒ってない!話は終わった?もう行くから!」 「待てよ!あーほんとお前イライラする」 はあ……?イライラするのはこっちだっての!! 「僕の方がイライラするよ!」 「ほら、怒ってんじゃん」 「だから怒ってないってば!早く用件言ってよ!」 「……だから!俺がお前に勘違いされたままじゃ困る。周りの誤解なんてどうでもいんだよ」 なんだよ、それ。もう意味がわかんない。 僕にわかるように説明してくれなきゃわかんないって。 「はあ……お前こそいつまでもオタクぶってんじゃねえよ」

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