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第32話
は……?オタクぶるなってなに?
僕がいつオタクぶったって言うの……?
「なにを言ってるの……?」
「なにってそのままの意味だろ」
いやだから莉羽はなにを思ってそんなこと言ってるわけ?
僕はLieNが売れる前から劇場で踊っている時からずっとずっと莉羽のファンだったんだよ……?
初めてこんなに誰かに夢中になって、初めて誰かのことを「美しい」と思って、それで……
「僕がどれだけ莉羽のファンしてきたと思ってるの?」
「お前いつまでそんなこと言ってんの?ファン?オタク?それだけの気持ちなのかよ」
だから莉羽は神様よりも仏様よりもどんな存在よりも尊くて美しくて綺麗でそんな言葉じゃ済ませちゃいけないくらいの存在で……僕達みたいなオタクが簡単に近付いちゃいけない存在でしょ?
「それだけ……?僕はいつもずっとずっと莉羽が尊くて綺麗で仕方ないよ!莉羽にオタクの気持ちなんてわかるの?」
莉羽は追っかけられる側だから追っかけるオタク達の気持ちが理解できていないんだよ。
「だから俺が言いたいのは……!やっぱいい。お前に気付かそうとする俺がバカなんだ。一生ファンだって、オタクだって言い続けとけよ」
ああ、言い続けるよ!
言われなくてもずっとずっと僕は莉羽のファンで、オタクで、一生いてやる。
「莉羽ってほんと意味わからないね」
「は……?意味わかんねーのはお前だろうが。俺達、出会わない方がよかったのかもな」
はい……?なにそれ。それは僕にファンをやめろって言ってるの?
出会わない方がよかったっていくらなんでも酷いでしょ。
「なにそれ、僕にファンをやめろって言ってるの?だったらお断りだね!僕は絶対死んでもやめてやらないから。一生キモオタでいるから。残念だったね!」
正直、莉羽の言葉に少しイラッとした。
だから僕なりの精一杯の反抗だった。
「……好きにしろよ。けどもう俺からは連絡しない。お前がわかるまで絶対にしないからな」
「別にいいし!でもライブは行くから!莉羽のバカ!もう知らない!」
本当は莉羽に会ったら将来のことを話したかった。
莉羽が「絵の世界に行ってほしい」そう言ったから「頑張るよ」って伝えたくて、それなのになんでこうなるの?
僕はなにをわかればいいの?それすらも教えてくれないくせに。
「……あっそ。じゃあな」
この時の莉羽はすごく悲しそうな顔をしていたことは今でもはっきりと覚えている。
今、止めないと最後になる気がしていたのに僕は止めれなかった。
「……莉羽のバカ」
そう小さく呟いて僕も凛太郎達の元へと戻っていった。
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