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第33話
「お前、遅かったな……って、どうしたんだ?」
ここに凛太郎だけなら僕はきっと話していただろうけど、さーちゃんがいるし言える状況じゃなかった。
別にさーちゃんが信用できないとかじゃない。
そうじゃないんだけどオタ友として申し訳ないって思うからっていうのが1番かもしれない。
「ゴキブリ見ちゃったから」
こんな真冬にゴキブリなんているわけない。
冬眠しているのはわかっているんだけど今はこの言い訳しか思いつかなかった。
だけど凛太郎はなにか察していたみたいで「柚子シャーベット頼んでやるよ」なんて言ってくれた。
僕は柚子シャーベットが好きだから。
「来月LieNのライブあるけどゆっちチケット取るの?予約してるんだけど当たるかなー」
「あー……僕、来月から少し忙しくて……LieNのライブは当分お預けかな。どうせ当たらないだろうし」
莉羽にあれだけ「ライブは行く」とか言っておいて結局逃げてしまった。
僕ってファン失格なのかもしれない。
「よーし、そろそろ帰るか」
「そうだね。未成年を連れ回したら私が捕まっちゃうから。まあ凛太郎くんの奢りだけど、へへ」
さーちゃんを家の近くまで送り届けて凛太郎と二人きり。
「なにがあったんだよ」
「う、うう……凛太郎〜!!!」
さっきあったことを全て凛太郎に話した。
凛太郎は目を見開いて首を傾げていた。
「待て待て待て。お前らなに?」
「なにが?だから莉羽がわけのわか――」
「お前もバカだな」
訳の分からないことを……!と愚痴ろうとすると遮られてしまった。
そして僕のことをバカだとか言ってくるし。
「なんで僕がバカなの……」
「気づいてないところがバカなんじゃね?」
「え、わからないから教えてよ!」
「……いやこれは俺が言うべきことじゃない。自分で気付け。バカ」
なんだよ!凛太郎も莉羽もなんなんだよ!
わかってるなら教えてくれてもいいじゃん。
「はあ……もう喋れないのかな」
「お前次第だろうな。まあ俺は応援するって。心配すんな、なんとかなるだろ」
「なんとかって……まるで他人事じゃないか!」
「そりゃ他人事だろ。まあアイドルは難しいだろうな〜 お前が苦労する。頑張れー」
「……? さっきからなんの話ししてるの?」
「さあな。秘密」
僕次第だとか、応援するとか、アイドルは難しいとかなにを言ってるの?
ファンでいることがそんなにダメなわけ?
あ、もしかして僕がオタクをしすぎているから控えろって話?
いや、違うか。それならもっと分かりやすく伝えてくれるだろうし。
あー……ほんと頭がパンクしそう。
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