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第37話
僕は莉羽に対する気持ちを気付いてしまった。
オタクだと思っていたのにこれは恋心だと知ってしまった。
尊い存在の莉羽を僕が『触れたい』と思ってしまった。
おこがましいのはわかっている。わかっているのにこの気持ちに気付いてしまった途端、莉羽に会いたくて仕方がない。
「で?俺を呼び出した理由は?」
だからっていうのもなんだけど、だから凛太郎を呼び出した。
「……僕はなんて腐った人間なんだ」
「は?お前とうとう頭おかしくなったのか?」
きっと凛太郎は薄々気付いていた。
僕が莉羽をどんな目で見ていたのか。
「僕は……莉羽のことを……抱きたいって思っているんだと思う」
「ふーん。そっか。いいじゃん」
「何も思わないの?気持ち悪いとか思わないの?」
「なんで思うんだよ」
「だって普通はさ……男女っていう基準じゃん」
「好きになるのに性別なんて関係ねえよ。好きなもんは好きなんだから」
ほら、凛太郎は優しい。
「気付いてたんでしょ?」
「ああ、まあな」
だろうね。そうだよね。僕だけが気付いてなかっただけで莉羽だってわかってたんだ。
僕にこの気持ちを気付かすためにヒントをくれていたのに僕は……
「とられる前に行ってこいよ」
「え?どこに?」
「は?お前の大好きな莉羽くんの所だよ」
「無理だよ……電話だって出てくれるかわかんないし、会ってくれるかだってわかんない」
そもそも会ってなんて言えばいいの。
「好きだ」って?いきなり?いきなり言って困らせたら?もしファンですらいられなくなったら?
「お前のそういう所がダメなんだよ」
「わかってるよ。わかってるけど……」
「はあ……ほらやるよ」
ポケットから何やら紙切れらしきものを出す凛太郎に首を傾げた。
「A席のチケットだよ」
「はあ!? なんで凛太郎が持ってるの!?」
「親父が飲みに行ってた時にたまたまテレビ関係者のおっさんと仲良くなったらしくて家で作ってる野菜を送ったらお礼にくれたらしい。でも俺、アイドル興味ないしお前にやる」
う、う、嘘だろ……
これは行かなきゃ絶対だめなやつじゃないか。
というか……もうそういう運命で出来ているんじゃないんだろうかとすら思う。
「こんなことってあるの……」
「明日だ。明日ライブがある。グズグズしてる暇があったらさっさとものにしろ」
ものにしろって言い方だよ。
莉羽はものじゃない!尊い存在だってば!
けれど……そんなこと言っている場合じゃないよね。
本当に誰かのものになっちゃう前に僕の莉羽にしなきゃこのまま終わってしまいそうで……
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