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第38話
〜〜♩
目覚ましと共に目が覚めた。
ライブ当日。こんなに緊張したのは人生で初めてかもしれない。
「よし、ライブの前に美容院だ!」
推しの莉羽に恋心を抱いてしまったのだから気持ちを伝える前に、さすがに身なりはちゃんとしようと思い美容院へと足を運ぶことにした。
そしてその後は服屋さんに行って店員さんにコーディネートをしてもらおうと考えているのだ!
「いらっしゃいませ〜」
「あ、予約している高月ですけど……」
「すぐご案内いたしますので少しお待ち下さいね」
「あ、はい……」
やばい。美容院に来ただけだと言うのにどうしてこんなに緊張してしまうのだろうか。
莉羽様……!僕がかっこよくなろうとなんてしてごめんなさい……!
少しでもあなたに見合う男に……って告白して僕はどうするつもり?付き合う……とか?
僕が莉羽と!? そもそも莉羽がOKしてくれるかすらわからないじゃないか。僕のバカ!マヌケ!
「お待たせしました〜」
そもそもどんな髪型にすればいいかすらわからないんだけど。
莉羽みたいな……?バカ。ダメそれは絶対ダメ。
「どんな感じにしたいとかありますか?」
「あ、そ、その……何も決まってなくて……僕に似合う感じで……お、お、お願いします!」
「フフ。かしこまりました。かっこよくしますね」
プロに任せれば間違いない。
だってプロだし。プロだもんね……
「出来ました。どうですか?てか……お兄さんすごくかっこい――あ!ごめんなさい!」
「……? あ、ありがとうございます」
鏡を見るとそこには別人の僕がいた。
少しパーマがかった髪にマッシュ系。そして栗色の髪色。人生で初めて髪を染めた瞬間だった。
「こ、これは僕ですか……?」
「はい!すごく素敵になられましたね」
自分で言うのもなんだけど『え、僕イケてね?』なんて思ってしまった。どうか僕のことを誰か……殴ってください。
お会計を済ませて少し凛太郎に自慢したくて自撮り写真を送り付けた。
〈誰?〉と返ってきたLIMEに〈僕〉と返すと〈プロってやっぱプロだな〉と返ってきた。
褒めてるんだよね?あまりにも僕がイケてるから褒めてるんでしょ?ねえ凛太郎。
その足でそのまま服屋さんへと向かった僕は垢抜けた自分に自信がついたのか普段は店員さんに話しかけれないのにこの日は話しかけれた。
「僕に似合うコーデをお願いします」と話しかけて。
試着室で思ったことはやっぱり「今日の僕はイケてる」だった。
「大丈夫……大丈夫。気持ち伝える」
胸をギュッと握ってLieNのチケットを持って僕は莉羽がいる場所へと歩みを進めた。
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