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第42話
こうして僕達は晴れて恋人となった。
なったんだけど……
「全く会えないじゃないかー!!!!」
仕方ないのはわかっているんだけど莉羽と会える時間が全くと言っていいほどない。
辛い!会いたい!泣きそうだ!
「ふん!別にいいもん!ライブDVDでも見て莉羽の顔を拝むもん!ふんふん!」
それにしても莉羽は……美しい。
いつ見ても本当に綺麗だ。
こんな美しい人間が僕の恋人なんて信じられる?
高校三年生がもうすぐ終わろうとしている冬に初めての恋人が出来て、しかもその恋人が推しだというこんな贅沢な話、誰が信じてくれるだろうか。
「将来の話だって出来てないのに」
結局、絵のことについては話せてない。
そもそもそんな時間すらない。
莉羽と繋がれる唯一の時間はレッスンの休憩中の電話だ。
〜〜♩
「り、り、莉羽だー!!!」
着信の相手は僕の愛しの人、莉羽だった。
ルンルン気分で応答ボタンをポチッとな!
『よ、キモオタ』
『り、り、莉羽〜!』
『相変わらずキモイな』
『休憩中?』
『おう、やっとな』
いつ聞いても莉羽の声にニヤニヤが止まらなくなってしまう。
重症だ!誰か僕を病院へと連れてってくれ。
『お疲れ様。そ、それでなんだけど……い、いつ会えるの?』
『うーんーそうだな。来週1回帰るわ』
来週……会えるだと?
嬉しい、幸せだ、僕を生かしてくれてありがとう。神様。
『えへへへへへ』
『まじキモイ。まあそろそろ切るわ』
『ええ……もう切るの?』
『悪いな。最近ほんと忙しいから』
『わ、わかった……また明日電話待ってるね……』
『ああ、浮気すんなよ』
ブチッ。
浮気なんてするわけないじゃないか!
というか……そもそもそれはこっちのセリフだ。
芸能界なんて綺麗な女優さんがいっぱいだろうに。
はあ……毎日、莉羽に会える人達が羨ましい。
「莉羽……尊い。好きだ。愛してる!」
僕って結構キモイな。
そんなことは初めからわかっているんだけど好きだと気づいてしまった途端、余計キモさが増しているような気がする。
「まあでも可愛すぎる莉羽が悪くない?」
そうそう、莉羽が悪いんだ!
僕のことを夢中にさせすぎる莉羽が悪い!
けれど、幸せすぎて怖くなる時はある。
初めて見た時から目が離せなくてずっと追いかけていた莉羽が僕の恋人になっている今、この幸せがいつか壊れてしまうんじゃないかと酷く怖い。
幸せすぎておかしくなってしまいそうになる。
こんなキモオタな僕だから……いつか飽きられてしまうんじゃないかと怖くて怖くて堪らない。
恋人になっても思う。
僕は本当に莉羽に触れてしまっていいのかと。
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