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第49話
『みんな卒業おめでとう――』
莉羽とは結局会えずに卒業式を迎えてしまった。
あんな寒かった冬はもう春を迎えようとしている。
「一緒に写真撮りたかったなあ」
ただ学校へ行っていた僕とは違って莉羽には休みがない。
春休みも関係ない。莉羽は忙しいから仕方ない。
「不満でしかない」
だけど……日に日にわがままになっていく僕。
『会いたい』とLIMEを送っても『忙しい』と返されることにも不満が募っていく。
『僕はこんなに会いたいって思ってるのに』とか『莉羽は僕に会わなくても平気なんだ』とか余計なことまで考えてしまってイライラする。
「はあ……付き合ってる意味ある?」
そう呟いたら肩をポンと誰かに叩かれた。
まあどうせ凛太郎だろうけど。
「せっかくのおめでたい日になんだ?そのテンション」
「全然おめでたくないよ。寧ろ最悪だよ」
「なんで?」
「なんでって……自分が自分じゃなくなるから」
「恋なんてそんなもんだろ」
そんなもんねえ……僕とは違って凛太郎は大人だ。
僕にはそんな余裕が持てない。
あんなに毎日くれていたLIMEだって頻度が減った。
不満を持つなって言う方が無理な話でしょ。
「これなら推しのままでいたかったよ」
足元にあった石ころを軽く蹴った時、
「あっそ。じゃあ戻ればいんじゃね?」
このタイミングでなぜか莉羽が現れた。
会いたい時にはいないくせに変なタイミングで。
「なん、で、いる、の……?」
「お前が今日卒業するから祝いに来てやったらこれなんてほんと笑える」
「ま、ま、待って……!誤解だよ!」
ダメだ、完璧に怒ってる。
多分……僕にくれようとしていた花束。
その花束を莉羽は思い切り地面に投げつけた。
「これ……僕にくれようとしてたの?」
「当たり前だろ。でも必要ないらしいな」
そう言いながら花を踏み付ける。
その行動にすごくイライラした記憶がある。
僕が余計なこと言っちゃうのが悪いのはわかってはいるけれど多分なにかがプチンときたんだと思う。不満とか色々含めて。
「……何してるの」
「は?必要ないんだし関係ないだろ」
「莉羽はいつもそうだよね。気に入らないことがあると勝手に1人で感情的になってさ自分勝手すぎるんだよ。僕のこと召使いとでも思ってるの?」
別にこんなことが言いたいわけじゃないのに。
本当は『会えて嬉しい』って言わなきゃならないのに。
凛太郎が必死に止めてくれている声も聞きもせずに口だけが勝手に動く。
「は?そんな風に思われてたならお前といる意味なんてねえよ」
ほら、またこうなる。
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