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第50話
――そんな風に思われてたならお前といる意味なんてねえよ。
この言葉を言い残して莉羽はどこかへと行ってしまった。
そして僕はまた止めることすらできなかった。
僕のために用意してくれた花束は悲惨な姿となって風と共にひらひらと舞っている。
「可哀想に」
花びら達に優しく触れながらそう呟いた。
本当……僕は可哀想な奴だ。色んな意味で。
「おい、いいのかよ」
「今、追いかけたところでどうせ逃げられるだけだよ」
「また面倒臭いことになるぞ」
凛太郎はこれでも一応、心配してくれている。
人に興味すらない僕は人に苛つくという感情もなかった。
僕が苛つくと言えばLieNや莉羽をバカにされた時くらいだった。
それなのに莉羽は僕のことを凄くイライラさせてきて、僕をすごくわがままにさせる。
「好きなのになあ」
なんでこうも上手く伝わらないんだろう。
「好きならやっぱ追いかけるべきだろ」
凛太郎はそう言うけど今の僕には追いかける資格なんてない。
「……いい。今はいいや」
「捨てられても知らないぞー」
捨てられたらどうしようという恐怖があるくせに『捨てられても仕方ない』と思ってしまう自分もいる。
だってそもそも僕達は見ている景色が違うんだから。
そりゃ捨てられたら『そっかあそうだよね』で済ませるしかなくない?嫌だけど。
「あーもう!!やっぱ行ってくる!!」
「はーい、いってら」
冷静に考えたら悪いのは僕だ。
いや考えなくてもわかることだけど。
息を切らしながら莉羽に電話をかけてみたけど繋がらないし。
「いちごミルクだー!」
多分いちごミルクを買いに行ってるんじゃないかなって思った。
莉羽はイライラしてても嬉しい時でもいちごミルクを絶対に飲まなきゃ落ち着かない人だから。
コンビニの方へと向かっているとちょうど莉羽がコンビニから出てきた。
「僕って天才」
そう呟きながら莉羽の前に立った。
「莉羽!」
名前を呼ぶと目をものすごく見開いて驚いた顔をしている。
「……来るな!」
「ごめん、それは無理なお願いかも」
来るなと言っておいて泣きそうな顔をしているくせに。
「莉羽。ごめん。話をちゃんと聞いてほしい」
「嫌だ。確かにお前はキモオタのままがいいと思う。だからファンのままでいろ!俺をこのストレスから解放してほしい。別れて」
ストレス……?僕が莉羽にストレスを与えてたってこと?待って待って。意味がわからないんだけど。
え……?莉羽は今なんて言った?
「え、なに言って――」
「無理に付き合わせてごめんな。じゃあな」
僕は立ち竦むことしか出来なかった。
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