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第53話

「ちょうどいいや」と言い放っといて鼻歌を歌いながらどこかへと行ってしまった。 「なんだったの……?」 まだ日生の撮影まで時間があるし時間を潰すためにテレビ局のフロアへと足を運んだ。 1階のフロアには机達がズラリと並べられてあって芸能関係者は飲み物も無料。 ホワイト企業万歳! 「だーかーらー別に仕事には影響しないでしょ?そもそも芸能人が恋しちゃダメなんて誰が決めてんの?バカバカしい」 甘々のコーヒーを飲みながらスマホを見ていると奥の方から女の人の声が聞こえた。 心の中で女の人が言ってることにうんうんと頷きながら盗み聞きをしてみる。 「しかしですね……相手は人気な方でして……」 「だからなに?なにが関係あるの?好きな者同士一緒にいてなにが悪いの?」 そうだそうだ!と言いたいところだけどマネージャーさんの気持ちもわかる。 相手が人気な人ほど色々と大変なんだよねえ。 マネージャーって結構、大変だからね? 「とくに莉羽さんはメンバーの中でも一番人気なんですってば!俳優業にも力を入れてますし……」 んん……?まさかこの女の人って……莉羽の相手の人だったの!? 最悪だ、最悪だー!!!あの女め。さっさと別れろ。 まあ僕にはこんなこと思える権利なんて全くないんだけど。 そんな時、鋭い視線が僕に向いているような気がしてふと見てみると莉羽の熱愛相手のグラビアアイドルだという女の人がこちらをすごい目で睨みつけていた。 「……?ど、どうも。あ、え、ええと……どこかでお会いしましたっけ?」 「は?キモ」 ええ……なんでやねん。 ものすごい目線を送ってきたのはそっちじゃないか! キモイって……え、本当になんで? 「あ、す、すみません」 謝る理由なんてないんだろうけど一応謝罪をするとこちらへと歩を進めてくる。 「……あんた可愛い顔しといてオタク感丸出しすぎてキモイね。まるで私のファンのキモ親父と同じだわ」 「き、き、キモ親父……?お、オタク……?」 確かに僕はオタクだ(元)。 見ただけでわかるとか……この人はもしや天才!? 「あんた莉羽のファンでしょ」 「は、は、は、!? そ、そ、そんなことないですよ! な、な、なんでそんなこと思うんですか!?」 「めっちゃ動揺するじゃん。だってさっきから私のことすごい目で見てたから。まあ報道の通りそういう事だからごめんね〜?キモオタくん」 そんな目で見ていたつもりはないんだけど、どうやら僕はまだまだ莉羽を恋愛感情として見ているらしい。まあそんな事はわかってたんだけどやっぱり……誰にも取られたくないなあ。

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